研究課題/領域番号 |
16K13223
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
黒田 航 杏林大学, 医学部, 准教授 (30425764)
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研究分担者 |
阿部 慶賀 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (70467041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 容認度評定 / 容認性判断 / 容認度評定データベース構築 / 逸脱文の自動生成 / 実例の見本抽出 / データベースへの要望調査 |
研究実績の概要 |
H28年度は,容認度評定データベースD を構築する本研究プロジェクトの周知と,D の基になる刺激文集合E の構築を進めた.それはE が反映すべき特性の要望調査を含む.具体的な活動と成果は次に挙げる通り: [1] 8月から9月の期間に3名の作業者に依頼して言語研究の実例の見本のデータベースを構築した.一定の基準で49冊の書籍を評価した範囲で6冊から,それらに記載されている全事例を収集し,データベース化した.結果としての容認度の評定つきの実例が4,658例集まった.調査の成果を [4] で発表した.[2] 認知言語学会17回大会(2016/9/10)のワークショップ「見えない言語をどう見るか?」(黒田航)で「心理学的により現実的な容認度判定のモデルを求めて」の演題で,言語学者向けにD の構築の目的と意義を説明した.[3] 認知科学会33回大会 (2016/9/17) で「(言語学者による) 容認度評定の認証システムを試作する構想: 入念に設計された日本語文の容認度評定データベースに基づいて」(黒田航ほか) の演題で発表し,D の構築の目的と意義を説明し,主に心理学関係の研究者から刺激文集合 E が反映すべき特性の要望調査を行った.[4] 言語処理学会23回大会(2017/3/20)で「言語学は事例をどう扱っているのか?: 見本抽出から明らかになった扱い方の(意外な)片寄り」(黒田航ほか)の演題で [1] の作業の結果を報告した.加えて,言語処理関係者を対象として刺激文集合E への要望調査を追加的に実施した.[5] 2017年3月にWebフォームを使って,より広い範囲を対象としてEへの要望調査を始めた (現在も継続中).[6] 連携者と協力し,E を構成する逸脱文の候補を,実例=非逸脱文から自動生成するプログラムを開発した(時期を見て公開の予定).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
刺激文集合Eの構築の方法を,人手構築から半自動構築に変更した (この変更は日本認知科学会での一研究者からの助言によるもの).そのため,逸脱文を自動構築するプログラムの開発が必要となり,その実施に予定以上の時間がかかった.そのため,H28年度内に刺激文集合を確定する事はできなかった.
しかしこの遅れは次の意味で見返りが伴うものであると期待される: 候補生成の半自動化により,予定されていた以上に刺激のランダマイズが可能となり,要因の体系的探索が容易になった.その当然の結果として,刺激の質が向上する.
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今後の研究の推進方策 |
[1] 元の研究計画では明記していなかったが,評定反応の取得は数回に分割し,知見を蓄積しながら進める. [2] 刺激文集合の確定を済ませ,第1回目の実験の結果の早目に得て,その解析の結果をLREC2018で発表する事を目標にする (2017年9月17日が締め切り). [3] 申請した予算が削減された事もあって,研究計画書にあった容認度評定力の認証システムの試作は,本研究が上げる研究成果の必須の要件としない事にした.この方針変更の理由は,聞き取り調査の結果,体系的に設計した刺激を基にして得た,ある程度の規模の容認度評定データベースの提供が,それだけで十分に関係者の需用に応えるものであると判明したからである.
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次年度使用額が生じた理由 |
[1] 打ち合わせのための旅費は節約し,本年度以降の実験費用に繰り越した.[2] 応募した学会の一つで成果発表が採録されなったので,その旅費を繰り越した.[3] データベース構築が予想より効率的に進み,経費が予算を下回ったので,繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算の用途は,実験の回数を増やす,一回当たりの実験参加者の数を増やす事に,非排他的に充てる.
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