研究課題/領域番号 |
16K13226
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
北村 達也 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (60293594)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発話のしにくさ / 発話訓練 / 顎運動制約法 / MRI / 磁気共鳴画像法 / 磁気センサシステム / EMA |
研究実績の概要 |
本研究では,発話器官の形態や機能,基礎的な発話能力に病的問題が認められないにもかかわらず発話のしにくさを自覚する人々の実態を調査し,それらの人々の発話プロセスや発話器官の形態や機能について分析する.2年目である本年度は以下の研究を行った. (1) アンケートの実施:昨年度はインターネット経由にてアンケートを実施したが,回答率が低かった.そこで,本年度は冊子のアンケートを作成した.そして,国内の15大学の計2000名以上の大学生,大学院生を対象にして調査を行った.回答者の31.0%が普段の会話で発音がうまくいかないと感じることが「ある」または「どちらかといえばある」と回答した. (2) 発話訓練法の検討:割り箸やペンなど棒状のものをくわえて発話をする訓練法(顎運動制約法)の効果を実験的に調査した.その結果,この手法は短時間(5分間)の訓練であっても声の高さの抑揚,明瞭性,声量などを改善する効果があることを明らかにした.ただし,効果を上げるには,参加者の訓練に対する意欲も重要である. (3) MRIによる発話器官の観測:発話のしにくさを自覚する者を対象にMRIにより発話器官の形態および動態を観測した.このうち1名は口蓋帆が非常に長く,発話中に咽頭腔内を大きく動く様子が観察できた.このことから,医学的には異常と診断されていなくても,発話器官の形態的な理由によって,発話がしにくくなるケースが存在することが明らかとなった. (4) 磁気センサシステムによる発話動態の観測:発話のしにくさを自覚する者および自覚しない者の発話動態を磁気センサシステムを用いて観測した.このシステムは舌や口唇などに小型のセンサを貼り付け,その動きを追跡するものである.この実験により,発話のしにくさを自覚する者は舌の周期的な運動が困難であることが多いことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アンケート,MRI観測などを予定通り実施したことに加え,音声の明瞭性を改善する訓練法の開発も進んだため.また,学会,研究会での発表に加え,論文の投稿も行ったため.
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今後の研究の推進方策 |
MRIや磁気センサシステムによる観測データを積み上げるとともに,効果的な発話訓練法の検討も実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケートの回収数が予定より少なかったため,アンケート結果の入力作業に要した謝金が少なくなり,次年度使用額が生じた.次年度もアンケートを継続し,この分を使用する計画である.
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