研究課題/領域番号 |
16K13230
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
村上 敬一 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 准教授 (10305401)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域方言 / 四国方言 / 若年層方言 / 社会言語学 / 方言変化 / 方言接触 |
研究実績の概要 |
本研究はいわゆる「コホート系列法」によって若年層方言の動態を解明し,日本人の言語形成期最終盤から終了直後における,言語変化モデルの構築を目的とするものである。四国、九州の中高生を対象として,進学や就職などによって言語をとりまく環境が大きく変動する,この世代特有の活発な言語変化のプロセスとメカニズムを「コホート系列法」を用いた言語調査によって継続的に追究し,データによって実証された言語変化のモデル化を目指すものである。 2016年度は,徳島県西部の吉野川市立山川中学校,美馬市立岩倉中学校,三好市立井川中学校,および徳島県立脇町高校,同池田高校,城東高校の生徒を対象として,アンケートと面接,談話収録による言語調査を実施した。被調査者の総計は、400名を超えている。 また、徳島県西部と類似の言語環境にあると思われる、熊本県天草下島の県立天草高校でも同様の調査を実施することができた。 調査結果については、村上の担当する「日本言語演習」や、卒業論文のデータとして活用した。一例を挙げると、断定辞の「だ」について、徳島県西部の中学生では,伝統的な方言形である「ジャ」や「ダ」の使用が多くみられたが、高校生では関西方言の「ヤ」使用が増加する。若年層における共通語として、関西方言形の使用が垣間見える結果であった。 「コホート系列法」調査によって,中学から高校,高校から大学といった進学などに伴う活発な言語変化が観察される,若年層の言語動態が明らかになる。語彙や文法における方言使用,標準語使用および使い分けの実態や,言語生活の実態を明らかにすることで,若年層における言語変化の普遍的なモデルの構築を引き続き目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にも記したように、2016年度は,徳島県内中学校と高校の計6校で400人を超えるアンケート調査と,一部生徒の談話調査を実施することができた。当初の予定になかった熊本県立天草高校のアンケート調査,談話収録を含めると,方言データの収集という点では順調であったといえる。 データの分析については,大学の授業内での取組や高大連携での課題において進展中である。2017年5月には,研究成果の一部を、日本方言研究会のブース発表にて報告することも決まっている。 これらの成果をふまえて、次年度以降の継続調査(縦断的研究,パネル調査)や,今年度と同様の「横断的調査」につなげていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の取組によって,次年度以降の継続調査のための基礎的なデータを収集することができた。本研究は、若年層における言語習得,言語接触,言語変化の様相を,横断的研究と縦断的研究を組み合わせて解明しようとする研究である。被調査者に対して面接調査やアンケート調査を実施する横断的手法(cross-sectional method)と,同じ被調査者に対して,同じ調査方法で,同じ調査項目を繰り返し調査する縦断的手法(longitudinal method)を用いて研究を進めていくものである。 横断的手法によって同年齢の集団に対する調査を実施したのち,その集団に対して縦断的手法による調査を実施するのがコホート系列法(cohort sequential method)である。横断的手法で同年齢の集団(コホート)の一般的傾向を明らかにするとともに,縦断的手法でその因果関係を明らかにすることができる。 今後とも「横断的調査」と「縦断的調査」を組み合わせることで、研究を推進していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入時、当初の計画より安価で購入することができたため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費等として、適正に使用したいと考えている。
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