研究課題/領域番号 |
16K13245
|
研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
歌代 崇史 北海学園大学, 経済学部, 教授 (40580220)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 日本語教育 / 教員養成 / ティーチャートーク / 言語調整 / 身体動作 / システム開発 / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本語教員を目指す学生および教授経験の乏しい新人の日本語教員が,様々なレベル・進度のクラスを疑似体験できる日本語教員養成システムを開発し,その教育効果を学習者の意識,行動の変化に着目して,実証的に検討することである. 平成28年度の目標の一つは,日本語教員養成課程の実習生が,模擬授業等の準備において,日本語学習者の習得段階に応じてティーチャートークを考える際に,発話以外にどのような要素を考慮するか明らかにすることであった.ティーチャートーク・テストという記述式のテストを開発し,そのテストによって得られた実習生19名分のデータ(38問の回答)を分析対象データとし,5つの類型に分けて質的分析を行った.5つの類型とは次のものである.(1)教師の具体的動作,(2)日本語学習者の具体的動作,(3)教師の前後の発話または,教師の前後の行動に関する補足説明(発話の目的,行動の目的,発話意図の明確化,行動意図の明確化,内容の補足など),(4)日本語学習者の前後の発話または,日本語学習者の前後の行動に関する補足説明(発話の目的,行動の目的,発話意図の明確化,行動意図の明確化,内容の補足など),(5)指導上の補足説明である.さらに,類型ごとにコード化を行った.その結果,「教師の具体的動作」においては,教授経験の乏しい実習生であっても,「ジェスチャー」,「文字や物の表示」,「物の移動」に関して,十分意識された状態にあることがわかった.一方,「教師の発話の補足説明・行動の補足説明」においては,実習生の記述から想定の未熟な部分が明らかとなった.これらを論文にまとめ,投稿した. また,システムの解析精度を向上させるための改良も行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画段階では,日本語教員に質問紙調査を行い,教室内言語調整の言語以外の関係要素を抽出予定であったが,過去に研究代表者が行った実験から得られたデータにも教室内言語調整の言語以外の要素が含まれていることがわかり,それを利用した.その結果,実習生が実際にどのような項目に注意を払い,どのような項目には意識が低いのかが明らかになり,今後のシステム開発に向けた重要な要素が明らかとなった.計画とは異なる手法であったが,当初から28年度に予定していた成果が上げられた.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成28年度までに構築したシステムの開発を継続する.具体的には、平成28年度の研究で得られた教室内言語調整を考える際の言語以外の要素を基盤にしてシステム改良を行う.システムを使う実習生が言語調整の練習を行う際に,実際の教室をイメージし,自分が教師として学習者の前に立ち,教授を行うことを容易に想像できるような機能を開発する.システム内に教室の3D画像を表示し,実習生が自由に教師役の自分のアイコンを移動させたり,教科書を持たせたりできる機能を実装する予定である.そのためには,3D画像関連の知識,実装技術を学習する必要があるため,今年度はシステム改良と共にこれらの技術に関して学ぶ予定である.今年度末を目処に,システム内に3D教室が表示され,言語調整の練習が可能なTeacher Talk Trainerの完成を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究旅費と文字起こし費用が当初の予定よりも安かったため.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は次のことに使用する予定である.システム開発、レンタルサーバー、評価実験、資料収集、機材購入、発表のための旅費である.
|
備考 |
本研究課題で開発した教室内言語調整の練習支援システム
|