本研究の目的は、日本語教員を目指す学生および教授経験の乏しい新人の日本語教員が、様々なレベル・進度のクラスを疑似体験できる日本語教員養成システムを開発し、その教育効果を学習者の意識、行動の変化に着目して、実証的に検討することである。言語的要素(どのように説明するか)に加えて、言語以外の要素(教師の身振り手振り、説明に使用する物など)も含めて授業体験ができるバーチャルな日本語教室を web 上で構築することを目指した。 平成30年度の当初の計画は、平成29年度までに開発したシステムを授業と組み合わせて使い、学習評価を行うことであった。しかし、システムの3D教室に関する部分の開発が遅れ、実践授業へのシステム導入および教授効果の検証までは至らなかった。しかし、システムの開発途中で、本研究の目的をより適切に達成するための計算式の開発に着手することができた。非常に小規模ではあるが、日本語教員による採点が行われた教案コーパスに基づき、日本語教員の採点を予測可能な計算式を導出した。この計算式は、本研究の目的である言語と言語以外の要素を考慮したe-learningシステムの構築に役立つものであり、より適切で、詳細な支援を可能にするものである。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、まず、実習生の「学習者への指示」(言語)が、言語以外の要素と組み合わせて発話された場合(記述された場合)の適切性を判定し、フィードバックを返すために不可欠な計算式の開発がある。また、バーチャルな教室環境をweb上で再現し、それを見ながら実習生が教室内言語調整の練習ができるシステムを開発した。システム開発が遅れたため、効果検証までは実施できなかったが、今後行い実習生の能力、行動、意識の変化を言語と言語以外の要素を関連させて測定、分析したい。
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