研究代表者は、特区として小学校1年次より英語教育を「教科」として先進的に導入しているX市の教育委員会の全面的協力を得て、X市Y小学校1年次の児童の、入学時点(T0)での母語(L1)および英語(L2)の母音体系およびその一年後の1年次末(T1) における英語の母音体系の分析を行なってきた。本研究では、その継続研究として、2年修了時(T2)、および3年次終了時に同様の母音体系の発達の分析を行う。それぞれの時点での、母音のフォルマンと周波数を母音空間にプロットして、T0→T1→T2→T3という4時点での母音習得状況を音響音声学的に評価する。はじめて英語に接する小学校1年入学時から3年次末までの三学年の間に、母語(L1日本語)の母音体系(5母音)を出発点として23~25もある英語(米語)の母音体系をどのように習得していくかについて、両言語の母音の音響分析に基づき考察する。すなわち、L1の母音体系からL2の母音体系がどのように発達していくのかについての、通時的音響音声学的解析をその目的とする。 上記のX市の特区現場での実践的研究に加えて、以下の海外に於ける2言語使用の先進的取り組み機関および国を視察訪問する。それぞれのプロジェクトにおける言語政策および言語習得状況を実地調査することにより、情報交換・情報収集を行い、第二言語習得実践におけるより効果的教授法及びカリキュラム等において、実証的検証を行うとともに、現場にフィードバックすることを目指す。 1.欧州評議会言語政策部(フランス・ストラスブール)EUの複言語政策を統括する部署であり、EU各国の第二言語習得の貴重な実践データの宝庫である。 2.マルタ共和国 1964年英国から独立するまで、英国領の植民地。そのため、現在でも英語とマルタ語が公用語となっており、2言語使用およびSLA調査対象として最適である。 3.中華人民共和国香港特別行政区
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