研究課題/領域番号 |
16K13259
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
亘理 陽一 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90509241)
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研究分担者 |
酒井 英樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00334699)
浦野 研 北海学園大学, 経営学部, 教授 (20364234)
工藤 洋路 玉川大学, 文学部, 准教授 (60509173)
寺沢 拓敬 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (80772706)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エビデンス / 小学校英語 / 教育政策研究 / テスト開発 / 文法能力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語教育研究において利用可能な「エビデンス階層」を探究し,実践・政策における意思決定に寄与するエビデンスの産出・評価・普及モデルを構築することである。本研究のチャレンジ性は、国内の英語教育の政策的・実践的判断にエビデンスに基づく評価を与えようとしている点と、質の高いエビデンスを「つくる」過程を現場の英語教員との協働で行おうとしている点にある。また本研究は,膨大な時間と費用を投じて全く新たにエビデンスを得ようとするのではなく,既に行われ,点として散在する各調査を線として繋ぎ,質の検証を受けたエビデンスの平面として今後の政策的・実践的判断に資するものにしようとしている部分において斬新である。前年度の成果を引き継ぎ、英語教育研究・教育政策における「エビデンス」の現状、および小学校英語を事例とした因果効果の推定、文法運用能力を測るPKテストを例とした標準的測定モデルと共通変数の必要性・展望について検討を進め、研究分担者と学会にて報告を行った。研究分担者と2回のミーティングを開催し、エビデンス産出の一モデルとして、中高英語授業の指導法の改善に基づく英語運用能力の改善についてデータ分析を重ねた。今年度の成果にさらに、エビデンス産出・評価・普及の前提となるデータ解釈の原則や研究デザインの要件について検討を進め、1回の成果報告シンポジウムを開催した。また、共通変数の提示に向けて、中学校・高等学校の生徒を対象に実施したPKテストの分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2回のミーティングおよび1回の学会プロジェクト発表、1回の独自シンポジウムを開催し、引き続き、研究のアイディアをチャレンジ性を損なうことなく、研究B(エビデンス産出・伝達に関する学校・教員調査)および研究C(エビデンスを補完するランダム化比較実験)について、概ね当初の研究目的・計画どおりの進捗が得られた。研究Bについては、エビデンス階層の観点から英語教育研究・教育政策における「エビデンス」の現状を整理し、小学校英語を事例として因果効果を推定するとはどういうことかを示した。さらに、文部科学省委託事業「中学校・高等学校における英語教育の抜本的改善のための指導方法等に関する実証研究」の研究において得られたデータ等に基づき、学習指導要領における「授業は英語で行うことを基本とする」という方針の因果効果検証に向けたモデル検討・予備分析作業を進めた。研究Cについては、英語教育研究における共通尺度としてのPKテスト(根岸、2014)に関する検討を行い、標準的測定モデルと共通変数の必要性、および研究デザインのスタートラインで考えるべきことを論じた。
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今後の研究の推進方策 |
共通変数の提示に向けて実証研究を進め、利用可能な範囲のデータに基づいて英語教育研究におけるエビデンスの産出・評価についてモデルを確定し、さらにその活用・普及について検討を進める。研究Bについては、学習指導要領における「授業は英語で行うことを基本とする」という方針の因果効果検証を行なった先行研究を渉猟し、文部科学省委託事業「中学校・高等学校における英語教育の抜本的改善のための指導方法等に関する実証研究」の研究において得られたデータ等の更新を踏まえた上で、因果効果検証分析を行う。研究Cについては、PKテストのデータ収集・評価を行い、標準的測定モデルと共通変数の可能性について論じる。追加で必要があればランダム化比較実験を実施し、統計的分析に基づいてエビデンス評価とその補完の一連の過程をモデルとしてまとめ、英語教育研究において利用可能なエビデンス階層を探る。研究Bとして、一連の過程を、教師のデータ収集・エビデンス評価の経験・ 能力の獲得という観点から分析し、研究A(これまでの先進的取り組みの追跡調査)として、以上の全体を総合的に考察し、英語教育研究・教育政策におけるエビデンスの在り方として検討し、報告書にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査協力者を募っての調査を実施する計画が変更となり、静岡・信州の複数の学校・学年で実施したPKテストの採点・分析を平成30年度に実施することになったため。
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