2019年度は研究期間の1年延長期間であり、平成30年度に予定していて実現できていなかったインタビュー調査を行うことにより、質的データを収集し、その上で研究期間全体のまとめを行った。研究の主な結果として、学習履歴データの提示は一部の意欲的な学生には意味のある情報として有益であり、学習履歴データの提示の仕方を工夫することにより、彼らの学習や学習に対する行動を変容させる可能性があることが示唆された。特に、進捗が早い学生のデータや正解率が高い学生のデータ、理想的学習者のデータ、クラス全体の平均値など、他の学生の学習の様子を知ることができるデータの提示は、学習者自身の過去のデータの提示よりも提示が好まれ、また有効である可能性があることも示唆された。しかし同時に、多くの学生は目の前にある大量の課題をこなすことに多くの注意が向けられ、他の学生の学習履歴データが提示されようが、自分の過去の学習履歴データを提示されようが、あまり気にしておらず、場合によって提示されたことにすら気づいていない場合も見られた。また、そのような学習者たちは、提示されたデータを参照して自ら振り返りを行ったり、振り返りにもとづく学習姿勢の改善などはあまり行われていないことが明らかになった。これらの研究結果を国際学会で発表する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で国際学会に出席することができなくなり、非常に残念であった。
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