研究課題/領域番号 |
16K13275
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研究機関 | 北海道武蔵女子短期大学 |
研究代表者 |
板谷 初子 北海道武蔵女子短期大学, その他部局等, 准教授 (60747369)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スポーツ通訳 / プロ野球球団通訳 / 通訳者役割 / 通訳者アイデンティティー / スポーツ通訳技術 / 訳出方略 |
研究実績の概要 |
本研究は、通訳研究においてこれまでほとんど研究対象になることのなかったスポーツ通訳という領域で、通訳者の役割とスポーツ通訳特有の訳出方略を解明することを目的としている。スポーツ通訳といえども、その範囲は広いため、本研究では日本で長く国民に親しまれており、長い間通訳者が活躍してきたプロ野球通訳に焦点を当てた。 本年度は、1年目に行った文献研究を元に、エスノグラフィー観察と野球通訳者、外国人選手、球団スタッフなど16名へのインタビューを終え、さらには資料整理とインタビューデーターの書き起こしも終了した。得られたデーターは、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの分析手法に従い、分析ワークシートを作成した。さらにワークシートに基づいて作成した球団通訳者の役割変化のプロセスモデルを提示しながら、スポーツ通訳者に求められる役割を論じた。本研究成果は「スポーツ通訳に求められる役割~プロ野球球団通訳者に対するM-GTAを援用した分析を通じて」という論文として、日本通訳翻訳学会『通訳翻訳研究(Interpreting and Translation Studies)第17号』に掲載された。 本研究では、野球通訳者の訳出方略にも注目し、入手した通訳音声データーの分析を行った結果、一般の会議通訳などとは異なる訳出方略が使われていることが明らかになった。その成果は「スポーツ通訳における訳出方略~プロ野球球団通訳の事例から~」という研究論文にまとめられ、スポーツ言語学会の『スポーツ言語学研究(Studies in Sports and Language)第2号』への掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はインタビューデーターの書き起こしを終え、それを元に修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの分析手法を援用して、スポーツ通訳者役割論に関する論文を学会誌で発表した。またスポーツ通訳の訳出方略に関する論文も学会誌への掲載が決定した。それに加えて、複数回の学会発表を通じて、広く本研究に関するコメントを得ることができた。さらには、昨年度に引き続き今年度も立教大学の「翻訳・通訳と現代社会」という講義において、野球通訳の講義を行うことになっている。
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今後の研究の推進方策 |
論文2本を学会誌で発表することができたため、今後は本研究の成果を本にまとめ出版することを目指し、現在出版社と企画を作成中である。特に、本研究の開始時点から協力を頂いていたプロ野球通訳者が、2018年度よりアメリカ大リーグで通訳をしているため、この通訳者の継続調査を行い、日米両国における野球通訳について執筆することを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は1000円未満と少額であり、ほぼ計画通り支出できたと考える。翌年の使用計画は次の通りである。最終年度は研究の集大成として、本の執筆を予定している。その研究調査のため、アメリカ大リーグの通訳者インタビューを計画しており、旅費、取材費の支出が予想される。日本人大リーガーにインタビューを申し込んでおり、プロの選手であることから、取材が有料になることが予想されるほか、会場日などの支出も予想される。また海外出張先に持ち歩き可能な軽量ポータブルパソコンなどの機器を購入予定である。
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