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平成30年度は、前年までに水産総合研究センターを中心に収集した史料の分析を行った。これによって以下の点を明らかにすることができた。第一に、報效議会の郡司成忠による台湾対岸での漁場開設の動向である。これにより千島列島での漁業活動が台湾の対岸にも引き継がれていくことを明らかにできた。第二に、ロシア沿海州地域における日本人の漁業活動において、加工のための塩が重要であることを中国海洋大学での報告後に得た史料を解析して明らかにすることができた。この点では、日本の塩の専売制度との関連をさらに分析することが必要であることが分った。これに加えて、アジア歴史資料センターおよび『大日本水産会報』などから関係史料を入手することができた。第三に、第二に関連して、加工された水産物を輸送するために遠藤吉平が改良した俵造の問題の重要性を理解することができた。遠藤吉平の改良事業が函館という日本における水産拠点からどのように展開していったのか、という点について史料を収集して分析した。これは漁場における水産物加工の資金の効率化や時間の短縮につながり、地域の漁業活動に大きな影響を与えた。第五に、ラッコ・オットセイ猟について北方民族博物館の「第33回北方民族文化シンポジウム網走（国際学会）北方文化振興協会」で研究報告し、新たな知見を得ることができた。特に、その活動に従事していたアイヌの動向について『小金井良精日記』や『明治三十三年渡島国千島国（第一）』（河野常吉文書〔北海道立図書館〕）などこれまで使われてこなかった史料から新たな事実を提示できた。
以上の五点が平成30度の実績である。第一の点については「郡司成忠による水産事業の展開と海軍―辛亥革命期における台湾の対岸経営を中心―」（新潟大学教育学部研究紀要）と題して発表することができた。
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