本研究は、歴史史料の調査とインタヴューや遺構調査などのフィールドワークの両面から、河川整備事業と政治統合の関わりを明らかにすることを目指すものであった。研究計画では、18世紀を分析の中心として設定したが、それがその後の地域的差異にどのような影響を及ぼしたかについても探る試みを行った。 最終年度にあたる本年度は、河川生態系と政治統合について、昨年度に実施したインタビュー等の現地調査を補完するため9月に2週間の現地調査を行った。また、あわせて、18世紀初頭の河川整備の試みと地域住民の反応に関わる史資料の収集、分析を行った。後者については、研究課題についての歴史学、民俗学等の研究文献の収集、分析をほぼ完了することができた。また、一次史料については、国立文書館の総督府文書に含まれる、河川整備に関する調査報告書を入手したほか、ハンガリー王国北東部の文書館の予備調査を通じて、今後の研究推進に有意義な史料群が存在することを確認できた。年度内に入手した史料の分析を完了することはできなかったが、最終年度の翌年度には分析を終える見通しを立てることができた。 なお、現地調査で得られた成果について、歴史学以外の専門家との意見交換が必要と考えられたため、まずは学内の研究会、シンポジウムにおいて報告を行った。報告内容の一部は、学内紀要に発表済みである。史料調査に基づく研究については年度内の成果発表を行うことができなかったが、最終年度の翌年に2篇の雑誌論文として投稿・発表を予定している。
|