研究課題/領域番号 |
16K13288
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
加藤 朗 桜美林大学, 法学・政治学系, 教授 (10286239)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 木灰 / 黒色火薬 / カリウム |
研究実績の概要 |
本年度は、秩父、京都、堺の三カ所で調査を実施した。 秩父の調査では、硝石の再現実験をしている小池氏への取材で、これまでの硝石の製造に関するデータを借用し、すべてデータ化をすることができた。その結果大きな成果が得られた。再現実験では、木灰が大量に必要なことが明らかになった。原木に含まれるカリウム分は重量比で0.49パーセントであることが分かった。つまり100キロの木材から7キロの木灰が取れ、7キロの木灰に含まれるカリウム分は490グルとのことである。火薬製造にいかに大量の木灰が必要か実証できた。 京都では、黒色火薬の粉砕に必要不可欠な茶臼について茶道総合資料館や老舗茶道具店そして茶販売の老舗柳桜園で調査したところ、茶臼の伝来についてはどこも全く知らないということであった。 千利休が武器商人で、茶道と黒色火薬の密接な関係があるにもかかわらず、現代の茶道界では、そうした歴史については全く知られていないということがわかり、あらためて別の調査の方法が必要だということが明らかになった。 安土・桃山時代に自由都市堺は貿易の一大拠点であると同時に、武具や銃砲の製造、火薬の取引を行う日本最大の軍事都市であった。火薬の原料となる硝石がタイから輸入されていたことが、近年壺の発掘で明らかになった。 今回の調査の目的は、インタビューで硝石輸入の実態と、合わせて武野紹鴎、今井宗久そして千利休らが武器商人としてどのような役割を果たしていたかを明らかにすることにあった。しかし、予想通りというか、博物館の専門家も、軍事的な問題についてはほとんど知識がなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究がほとんどないために資料調査が進まない。その最大の理由が、研究対象が黒色火薬であるために、現物がほとんど残っておらず、またその製造法も多くの場合秘匿されており、記録が残っていない。また木灰の利用についても、染色、ガラス製造等火薬以外の利用については記録があるものの、どのように木灰を利用したかその詳細について資料は残っていない。というよりも、あまり関心も持たれていなかった。そのため木灰の利用については記録も記憶もあまりない。 とっかかりを求めて、黒色火薬製造に関連のある花火や茶道の茶臼を調査したが、木灰の重要性は明らかにできたが、日本で木灰が戦略的にどのように調達、使用されてきたかについては不明である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、戦国時代の日本と周辺諸国の交易について研究している研究者とのインタビューなどを通じて硝石や黒色火薬の輸入の実態を解明し、木灰がどのように外国あるいは日本で調達されていたかを調査する。 合わせて、最も重要と思われる18世紀アメリカのパール・アッシュ(精製木灰)の大英帝国への輸出についての調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランプ政権による入国ヴィザ規制のために、2016年度予定していたアメリカでの調査が極めて困難になったため、来年度に変更する。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカおよび英国での調査を実施。アメリカ入国が困難な場合には、スペイン、ポルトガルでの調査を検討する。
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