本研究は18,19世紀の大英帝国の国力の背景には、インドの天然硝石と北米の木灰とを独占し、大量の黒色火薬の製造により軍事力を強化できたからとの仮説の実証にあった。黒色火薬の主原料であるKNO3は、不純物を含む天然硝石をカリウムを含む木灰で灰汁煮をして製造する。しかし、インドですでに灰汁煮が行われ、英国でアメリカの木灰は灰汁煮に使用されていない。年間何万トンもの天然硝石を採取したインドでは大量の木灰や灰汁煮用の燃料用木材をどのように入手したかはなお不明である。NaNO3主体のチリ硝石も灰汁煮ではなく、米国デュポン社は黒鉛によるコーティングで潮解性の高いNaNO3を火薬原料として利用していた。
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