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2016 年度 実施状況報告書

社会変化の「速度」から解く先史時代人類史

研究課題

研究課題/領域番号 16K13290
研究機関筑波大学

研究代表者

前田 修  筑波大学, 人文社会系, 助教 (20647060)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード考古学 / 西アジア / 社会変化 / 変化速度 / 人口動態 / 農耕牧畜 / 技術革新
研究実績の概要

本研究では、社会が変化する「速度」に焦点を当て、人類史における社会変化の速度自体がどのように変化してきたのかを解明するため、西アジア先史時代をケーススタディとして、人口、生業、遺構、遺物に見られる大小様々な社会変化を数値的に評価することを目指している。3年計画の初年度にあたる平成28年度は、研究の第一段階としてデータの収集と解析に重点を置いた。海外研究協力者と共同研究を組織し、以下の項目を実施した。
1、人口動態をあきらかにする手段として、西アジアの先史時代遺跡から得られている放射性炭素年代測定値を積算し、その分布密度を居住痕跡増減のプロキシーとして用いることで、人口の変化速度の解明を試みた。公表されている年代測定値のデータベースを活用するとともに、オリジナルの炭化物資料の年代測定をおこない資料を充実させた。その結果、数千年の間に人口が徐々に増加したものの、環境変動などの影響は限定的であったことがあきらかになった。
2、住居の建替え期間の分析について、トルコの遺跡において住居から採取した炭化物の年代を測定した上で、ベイズ推定を用いて層位情報を兼ね合わせた年代決定をおこない、一軒の住居の居住期間および建替え期間の変化を推定した。一軒あたり60年から90年の存続期間という推定値が得られた。
3、生業の変化について、動植物遺存体の分析データを収集し、栽培植物、家畜動物の増加に現れる農耕牧畜発展の速度を検討した。データの解析・数式化には、Quantile Regression による回帰分析を用い、農耕牧畜の発展が数千年をかけてゆっくりと進行したものであることをあきらかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度に予定していたデータの収集については、おおむね当初の予定通りに進んでいる。イギリスを中心とする海外の研究者と共同研究を組織することで、効率よく情報を収集することができ、データベースを充実させることができた。またデータの解析にあたってもシミュレーション分析などの専門家を交えて議論をすることで順調に計画を遂行することができた。一方、当初予定していたトルコ共和国でのフィールド調査は、7月におこった現地でのクーデター未遂事件後の行政組織の混乱のため、中止とせざる得なかった。トルコ政府からの調査許可は下りたものの、現地の研究者との共同調査体制を維持することを優先し、無理をせずに次年度以降に調査を延期することとした。しかしながら、それに代えて、次年度に予定していた研究を前倒しで実施することができたため、全体の研究の進捗に大きな影響が出ることはなかった。特に、イラク・クルディスタン地域の遺跡から得られた資料の放射性炭素年代分析を実施し、これまで欠落していた13000年前の時期の良好な年代測定結果を得ることができたのは、当初の計画以上の収穫であった。

今後の研究の推進方策

研究2年目にあたる平成29年度の前半は、初年度におこなったデータ収集と解析を継続し、新たに以下の2項目について検討する。
1、石器・土器の製作技術・型式の変化速度の分析に関して、石器製作技術、石器型式の変化速度を検討する。数値化が難しい類いのデータではあるが、基準を設定した上で変化の大きさをランク化して度数を抽出し、その時間的増減を追うことを計画している。土器に関しては、基本的に文献資料から得られるデータを用い、同様の手法で分析を進める。また、初年度に実施できなかったトルコ共和国での数週間のフィールド調査を、8月から9月にかけて実施する。
2、埋葬様式の変化速度に関して、おもに文献資料から得られるデータを利用し分析する。すでに他研究者によってまとめられているデータベースを基礎資料として利用し、新たに変化速度の観点から時間軸に沿って再検討する。
研究2年目の後半からは研究計画の第二段階に入り、第一段階で得た結果をもとに、西アジア先史時代8千年間の社会変化速度の変動パターンをあきらかにする。また、得られた研究成果を早い段階で発表し、国際的な研究環境での評価を受けることを計画している。

次年度使用額が生じた理由

予定していたトルコ共和国でのフィールド調査が中止となったため、関連する旅費等を次年度に繰り越すことになった。

次年度使用額の使用計画

今年度に実施できなかったトルコ共和国でのフィールを調査を8月から9月に実施し、その旅費等に初年度から繰り越した次年度使用額相当の予算を充てる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] マンチェスター大学/レディング大学/ロンドン大学(UCL)(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      マンチェスター大学/レディング大学/ロンドン大学(UCL)
  • [国際共同研究] インスブルック大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      インスブルック大学
  • [雑誌論文] The lithic assemblage from a Neolithic hunter-gatherer site of Hasankeyf Hoyuk in southeast Anatolia2017

    • 著者名/発表者名
      Maeda, O.
    • 雑誌名

      Antiquity

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Narrowing the harvest: Increasing sickle investment and the rise of domesticated cereal agriculture in the Fertile Crescent2016

    • 著者名/発表者名
      Maeda, O., L. Lucas, F. Silva, K. Tanno and D.Q. Fuller
    • 雑誌名

      Quaternary Science Reviews

      巻: 145 ページ: 226-237

    • DOI

      10.1016/j.quascirev.2016.05.032

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] The lithic assemblage from Hasankeyf Hoyuk: a continuity of the hunter-gatherer tradition2017

    • 著者名/発表者名
      Maeda, O.
    • 学会等名
      Sedentism, Subsistence and Societies in Neolithic Anatolia: New Insights from Hasankeyf Hoyuk
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県・つくば市)
    • 年月日
      2017-03-23
    • 国際学会
  • [学会発表] Use of sickle blades and cereal crops in the Fertile Crescent: a quantitative approach2016

    • 著者名/発表者名
      Maeda, O., L. Lucas, F. Silva and D.Q. Fuller
    • 学会等名
      8th Conference on PPN Chipped and Ground Stone Industries of the Near East
    • 発表場所
      University of Cyprus, Nicosia
    • 年月日
      2016-11-25
    • 国際学会
  • [図書] The Origins of Agriculture. In A. Tsuneki, S. Yamada and K. Hisada (eds.) Ancient West Asian Civilization: Geoenvironment and Society in the Pre-Islamic Middle East.2016

    • 著者名/発表者名
      Tanno, K. and O. Maeda
    • 総ページ数
      87-98
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-21  

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