研究課題/領域番号 |
16K13290
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20647060)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人類史 / 考古学 / 西アジア / 社会変化 / 物質文化 |
研究実績の概要 |
人類史における社会変化の速度がどのように変化したのかを解明するため、西アジアの先史時代における、人口、生業、遺構、遺物に見られる様々な変化を定量的に評価することを目的とした。3年計画の2年目にあたる平成29年度は、トルコ共和国でのフィールドワークを中心に、研究資料の獲得と分析に重点を置いて研究を進めた。海外研究協力者と共同研究グループを組織し、以下の項目を実施した。 1、トルコ南東部、ハッサンケイフ・ホユック遺跡において、バトマン大学との共同による発掘調査を実施した。この遺跡で利用された石器類の製作技術・型式の変化について解析をおこない、その成果を学術論文としてAntiquity誌に発表した。 2、西アジアの遺跡で石材として利用された黒曜石の流通状況に関して、その時間的変化の様相と変化の速度をあきらかにするために、蛍光X線分析装置を用いた黒曜石産地同定分析を実施した。イギリス、マンチェスター大学の研究者との共同研究として、マンチェスター大学の Manchester Obsidian Laboratory において2017年6月と2018年3月に共同研究を実施した。 3、上記の2に関連し、アルメニアにおける黒曜石産地の資料を獲得するため、エレバン近郊のグタナサール山、ハティス山の黒曜石産地においてフィールドワークを実施した。アルメニアのInstitute of Archaeology and Ethnologyに所属する研究者の協力を経て岩石サンプルを採取し、その後マンチェスター大学で化学組成の分析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリス、トルコ、アルメニアの共同研究者と研究グループを組織し、フィールドワークおよび考古遺物の理化学分析に関して予定通りの研究を実施することができた。特に蛍光X線分析装置によるアルメニア産黒曜石の分析が大きく進捗し、データベースの拡充に成功するとともに、これまで知られていなかった、西アジア新石器時代の遺跡におけるアルメニア産黒曜石の利用状況があきらかになった。黒曜石流通の時間的変化を解明する上での貴重なデータを得ることができた点は、当初の計画以上の成果であった。
また、初年度の平成28年度に、トルコにおけるクーデター未遂事件のため実施できなかったハッサンケイフ・ホユック遺跡の発掘調査を平成29年8-9月に実施することができ、初年度の研究計画の遅れを問題なく取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究期間の最終年度にあたる平成30年度には、これまでに実施した研究によるデータの解析を継続するとともに、研究成果の取りまとめと発信に重点を置く。 特に、石器・土器の製作技術・型式の変化速度の分析を継続するとともに、定量的データにもとづいてその時間的変化を明確にする。同時に、建築物や埋葬様式の変化速度に関して、文献資料から得られるデータを活用し、変化速度の観点から新たに検討する。 また、これまでにおこなったフィールドワークを補足するため、夏期にトルコおよびアルメニアにおいて短期間のフィールドワークを実施する。同時に、海外の共同研究者と研究成果の総括と発表について議論するため、イギリスのマンチェスター大学に出向いて共同研究を実施する。 これらの成果を国際学会で発信する。9月にスペインで開催されるEuropean Association of Archaeologistsの年次大会において発表予定。さらに、共同研究者との共著論文を国際ジャーナルに投稿し、研究成果を発表する。年度前半に研究成果を一度発信した上で、同じ分野を研究する専門家からのフィードバックを得て、さらに内容を充実させたフォローアップ論文を年度後半に執筆、投稿することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成28年度に予定していたトルコ共和国でのフィールド調査が中止となり、それを平成29年度に実施することができたが、全体の計画を調整したため執行計画にズレが生じた。
(使用計画)次年度に実施する共同研究およびフィールド調査の補足のための旅費等を確保する必要が生じたため、平成29年度使用予定額であった予算の一部を次年度使用額へと充てる。平成29年度末に予定していた研究内容を平成30年度始めに延期するもので、計画全体の遂行に問題はない。
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