研究課題/領域番号 |
16K13299
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
須山 聡 駒澤大学, 文学部, 教授 (10282302)
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研究分担者 |
藤永 豪 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (00409955)
林 琢也 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (50572137)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 集落点検 / 地域振興 / 過疎化 / 高齢化 / 少子化 / 他出子 / 限界集落 |
研究実績の概要 |
平成28年度には,本研究課題に基づいた調査・実践活動を合計3回実施した。第1は6月24~29日に実施した鹿児島県宇検村宇検集落における集落点検,第2は9月1~4日に実施した佐賀県神埼市鳥羽院下で実施した集落実地調査,第3は岐阜県郡上市和良町で実施した集落点検である。第1は須山が主体となり藤永が参加し,第2は藤永が,第3は林が主体となり実施した。 宇検村宇検集落における集落点検では,集落住民の約半数が参加し,集落の実態を把握するとともに,問題点を抽出し,その解決策を求めて,研究者・学生と住民が議論を交わした。その結果は駒澤大学地理学科須山研究室編『奄美大島の地域性15』としてまとめられ,15の具体的な提案が示された。 神埼市鳥羽院下における集落実地調査では,高齢化と人口減少に悩むコミュニティの問題点を摘出し,打開策を模索した。また,集落内の社会的関係や生業活動などの生活基盤について調査し,藤永が神埼市主催の市民講座において講演した。 郡上市和良町における集落点検では,同町の地域づくり団体「和良おこし協議会」との協働で,主に他出子の活用を意識した実践活動を行った(林 2016)。集落点検には地域内の幅広い世代が参加し,主体的な地域づくりの意識啓発がなされた。 28年度においては,既存のT型集落点検を土台に,ワークショップ形式の実践活動に取り組んだ。その結果,ワークショップを実施した集落では,住民自身が地域の問題に主体的に関わろうとする姿勢が見られ,解決への第一歩が踏み出せた。しかしながら,地元行政や他集落の住民にまで問題意識が浸透しているとはいえない。また,集落点検の実施は,外部研究者よりも,地元住民や行政が主体となるべきことであり,ファシリテーターの養成に課題があることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・研究分担者が,各自の担当地域において改良版T型集落点検のワークショップを開催し,居住継続のための諸条件を住民協働で模索することができた。集落点検開催の手順が確認され,実態把握と問題点の摘出が短時間で効率的に行えることが確認された。加えて既存の集落点検では活用が限られていた集落地図について,これを住民の集合的なメンタルマップととらえた分析方法を開発することに着手した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,当初の予定通り,集落点検に基づいた実証的な調査・分析に着手する一方,集落点検を他の集落においても継続する。地元行政や地域団体から,集落点検実施の要望が強いためであり,宇検村では2集落,神崎・郡上では各1または2集落での実施を予定している。 前年度の集落点検から明らかになったことは,住民サイドに外部との交流よりも,現在の居住環境改善に対する要望が強いことである。人口減少や過疎化は危惧される問題ではあるが,それよりは医療や買い物といった日常の生活環境に住民の関心は向かっている。居住・生活環境の実証的な調査,特に近隣の都市との関係性をより精密に考察する必要がある。 また,身近な生活環境が住民にいかに認識されているかを明らかにすることも課題として浮上してきた。すなわち,自分たちの集落を「よいところ」とする認識が住民には共有され,居住継続の背景をなしているからである。それは客観的な利便性や施設の集積によって評価されるものではなく,居住者個人の主観的価値に属するものである。研究計画で提示した「内側性」概念に基づいた分析の必要性が高まった。 なお,平成29年度より研究分担者として香川大学経済学部の高橋昴輝を追加する。特に瀬戸内海離島における居住継続を研究課題として補完するためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が十分な研究時間を確保できなかったことが最大の理由であるが,年度途中から,新たな研究分担者を追加するアイデアが発生し,そのために配分金を確保する必要があったためでもある。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金377,954円のうち,200,000円は新たに研究分担者として加わった高橋に,平成29年度分として配分する。残金は研究代表者が本年度の出張旅費として利用し,年2回の集落点検を実施する。
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