研究課題/領域番号 |
16K13299
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
須山 聡 駒澤大学, 文学部, 教授 (10282302)
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研究分担者 |
藤永 豪 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (00409955)
林 琢也 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (50572137)
高橋 昂輝 香川大学, 経済学部, 講師 (40806345)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 集落点検 / ネオ内発的発展論 / 限界集落 / 離島 / 山村 |
研究実績の概要 |
ネオ内発的発展論に基づいた住民主体の集落維持に向けて,具体的な方法論が構築されつつある。鹿児島県奄美大島の宇検村,岐阜県郡上市和良地区,および香川県丸亀市の塩飽本島において集落点検の拠点が形成され,住民・研究者・学生の協働ネットワークによる議論が継続的に進行している。 本研究の成果として,上記3地区においては,集落の生活環境改善と交流人口の拡大を企図したさまざまな提案が実現されてきた。たとえば宇検村においては,耕作放棄地を利用したキャッサバ栽培や,ヤギによる除草,トウガラシを作付けすることによるイノシシ防除が実際に試みられている。また,地域の祭礼を継続するために他出子の子弟を参加させるプロジェクトが進んでいる。 一方,実践を続けていく上で新たな問題も認識されてきた。すなわち,さまざまなアイデアは提案できるものの,それを実際に行動に移すことの困難性である。高齢化が進展し,人口規模が縮小した集落では,担い手となりうる青壮年の人材が少なく,また,意欲的な青壮年の意見を集落内部で否定する傾向が強い。その背景には,現状に対する肯定感があり,問題を抱えつつも自分たちの暮らしが成り立っていることをよしとする考えが横たわっている。 こうした現状肯定感は,自分たちの世代に限っては,という暗黙の前提の上に成り立つ。地域そのものの安定的な継続や維持は,もはや自分たちの関知するところではないという意識を多くの住民が共有している。 学問としての限界を感じつつも,こうした住民の意識を変えるきっかけを今後模索する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が,予期せぬ役職に就いたため,2018年度の課題進捗に遅れを生じた。そのため,研究期間を1年度延長し,研究を続けたい。とくに,上記で指摘した住民の自己肯定的意識について,自分たちが暮らす環境や歴史的蓄積を振り返るワークショップを開催することで,少しずつ改める契機としたい。
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今後の研究の推進方策 |
前項でも記載の通り,自己肯定感が強く,行政への依存心も大きいため,住民は主体的に行動することを忌避する傾向にある。集落をとりまく問題意識は共有されていることから,それを行動につなげるインセンティブを見いだす必要がある。 そのためには,自分たちが暮らす集落や地域をもう一度見直し,誇りやアイデンティティのよすがとなるさまざまな自然・文化的事物,いわば「地域遺産」を住民達の手で発見する取組が必要である。2019年度にはこれを目的としたワークショップの開催を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2018年度に予期せぬ役職に就いたため,研究計画が予定通り遂行できなかった。そのため,次年度使用額が生じた。2019年度には,前項で記載したとおり,地域のさまざまな自然・文化遺産を発見するためのワークショップを開催し,集落維持のインセンティブとなる要素を見いだす研究実践に取り組む予定である。
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