研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一次世界大戦後に海軍が占領し、その後、委任統治を行った南洋群島において制定された法及び裁判の実態を明らかにすることである。 本年度は、前年度に調査した1914年10月から1922年3月までの海軍統治期の南洋群島の統治機関、法、裁判について、『神戸法学雑誌』68巻3号(2017年12月)に、「海軍占領期南洋群島の法概論」を公表した。本論考では特に、外務省外交史料館所蔵の資料を主に用い、南遣支隊及び臨時南洋群島防備隊が制定した法を明らかにした。前者については、「軍政」法である軍律及び軍罰処分規則、そして、パラオ諸島とヤップ島を統治下第二南遣支隊の「民政」法であるパラウ民政区民政準則及びパラウ民政区刑令を、後者については、臨時南洋群島防備隊が制定した「民政」法、特に1915年10月の「臨時南洋群島防備隊民政令公布式」以降に制定された62の民政令を紹介した。 また本年度は、アジア太平洋戦争期に南洋群島で行われた構外作業についても調査を開始した。1939年9月、海軍省は受刑者の派遣出役を要請し、これに対し司法省行刑局は、マリアナ群島のテニアン島、マーシャル群島のウオヂェ島に、約2,000名の受刑者を派遣して、飛行基地の建設にあたらせた(南方赤誠隊)。さらにテニアン島での工事竣工後には、トラック島春島にも囚人を派遣し作業にあたらせた(図南報国隊)。本年度は、同時代の論考を通じて構外作業に関する議論を調査するとともに、その実態を学び、国外での構外作業である南洋群島の構外作業の合法性について考察した。
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