本研究は、国家間の海洋境界画定(主に排他的経済水域及び大陸棚の境界画定)について、法的な分析に地理情報システム(GIS)による分析を組み合わせる手法を通じて、海洋境界画定の実践における実質的な考慮要因を解明し、海洋境界画定に関する国際法の法理について新たな角度から研究を行うものである。 研究期間の最終年度である本年度においては、これまでに検討対象とした、国際裁判による海洋境界画定、海洋境界画定条約を通じた合意による海洋境界画定、そして沿岸国による一方的行為である海域主張の3点について、前年度までの研究を踏まえて、得られた結果の総括を行った。 国際裁判による海洋境界画定については、「衡平な解決」に向けて「過大な」影響を有する地理的な要素を裁判所がどのように調整してきたかを整理した。その一方で、裁判所の判断に影響を与える要素を類型化する等の整理はできなかった。ただし、このことは、裁判所による境界画定は創設的な性格を持つものであり、数値化が困難な裁量に依存する部分が大きいという見方を支持するものと見ることはできる。 海洋境界画定条約については、基本的に等距離線に基づいた境界画定を行う条約が多いが、200海里以遠の大陸棚に関する海洋境界画定条約においては多様な手法がとられており、この分野においては特にGISと組み合わせた分析が有用であることを確認できた。 沿岸国による一方的行為については、日本の海域主張について、地理的な要素の計算が必要となる200海里以遠の大陸棚と群島水域の問題を中心に検討を行ってきたが、これらとの関係でも、本研究において採用した手法の貢献が確認できた。
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