研究課題/領域番号 |
16K13322
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
渕川 和彦 山口大学, 経済学部, 准教授 (00711227)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラットフォームビジネス / 電子商取引 / 協調行動 / ハブ・アンド・スポーク |
研究実績の概要 |
平成28年度に実施した研究実績について1.米国法、2.EU法、3.日本法の理論分析について説明する。プラットフォーム・ビジネス(以下、「PB」)における協調的行動の代表例としてハブ・アンド・スポーク型共同行為がある。 まず、1.米国法について、ハブ・アンド・スポーク型共同行為の先例であるTotal Benefits Planning Agency事件第6巡回区控訴審判決を取り扱い、当然違法たるハブ・アンド・スポーク型共同行為には水平的な合意が必要であることを明らかにした(公正取引790号86-93頁)。さらに、PBにおけるハブ・アンド・スポーク型共同行為規制を検討するために、独禁法研究会(2016年度第4回)においてアップル事件第2巡回区控訴審判決を分析し、PBにおいても当然違法たるハブ・アンド・スポーク型共同行為には水平的な合意が必要であり、PBにおける運営者が、最恵待遇条項を用いてハブ・アンド・スポーク型共同行為を容易にする場合があることを明らかにした(公正取引799号掲載予定)。 また、2.EU法については、ハブ・アンド・スポーク型共同行為に関する論稿を多数執筆しているEU競争法の研究者にインタビューを行い、EU法及び英国法ではハブ・アンド・スポーク型共同行為が情報交換活動による共同行為として規制されていること等について意見交換を行った。また、インターネット市場にけおる競争法上の規制に詳しいEU競争法の研究者にインタビューを行い、PBにおいてハブ・アンド・スポーク型共同行為が容易となる場合などについて意見交換を行った。 3.日本法については、東京経済法研究会にてハブ・アンド・スポーク型共同行為に関する低温空調設備事件公取委排除措置命令・課徴金納付命令を取り扱い、日本法においては、異なる取引段階にある事業者間の共同行為について課題が残されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展している理由を、1.米国法、2.EU法、3.日本法について説明する。いずれもPBにおける協調行動の代表例であるハブ・アンド・スポーク型共同行為に焦点を当てて研究を行った。 まず1.米国法に関して、ハブ・アンド・スポーク型共同行為に関して体系的な分析を研究成果として出すことができた。拙稿「米国反トラスト法におけるハブ・アンド・スポーク型協調行動規制」『経済法の現代的課題-舟田正之先生古稀祝賀』は2017年5月下旬に刊行予定である。本論文において、米国法のハブ・アンド・スポーク型共同行為規制の先例は、PBにおける協調行動規制でも適用されることを明らかにした。 また、2.EU法については、当初平成29年度に行う予定だったハブ・アンド・スポーク型共同行為規制に関するEU法競争法の研究者に対するインタビューを行うことができ、判例・学説の調査が進んだ。また、インターネット市場における競争法上の規制に精通しているEU競争法の研究者にもインタビューを行うことができ、PBにおける協調行動全般についても意見交換を行うことができた。このように、EU法については、本研究テーマに詳しいEU競争法の研究者と意見交換を行うことができ、EU法の理論に関する調査を前倒しで行うことができた。 そして、3.日本法については、米国法、EU法と比較検討することで並行して研究を行っている。東京経済法研究会にて日本法のハブ・アンド・スポーク型共同行為規制に関する低温空調設備事件に関して研究会報告を行い、日本法のハブ・アンド・スポーク型共同行為規制の課題を示した。この東京経済法研究会の成果は2017年6月のジュリスト(1507号)で掲載されることが確定している。 以上の日米欧のハブ・アンド・スポーク型共同行為規制についてまとめたものを独禁法審判決研究会にて報告し、現在その成果をまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、1.平成29年度、2.平成30年度についてそれぞれ説明する。 まず1.平成29年度の研究計画としては、EU法におけるPBにおける協調行動規制に焦点を当て、PBにおける協調行動規制の代表例であるハブ・アンド・スポーク型共同行為の体系的な分析を行う。平成28年度におけるEU競争法の研究者へのインタビュー及び意見交換により、EU法に関する英国法のハブ・アンド・スポーク型共同行為規制に関するEUアップル事件確約決定(2012年)、AC-Treuhand事件(2015年)が関連する重要事件であることが明らかとなった。そこで、両事件を中心に関連する事件を取り扱う。AC-Treuhand事件については、独禁法研究会において2017年7月に報告を行うことが決まっている。また、EU競争法の研究者へのインタビューを通じて、英国法では、ハブ・アンド・スポーク型共同行為規制を積極的に行っていることが明らかになった。また、英国法のハブ・アンド・スポーク型共同行為規制について、乳製品製造販売事件競争不服申立審判所判決(2012年)が重要判例であるこということが明らかとなった。そこで乳製品製造販売事件を分析することで、英国法のPBにおける協調行動規制についても検討を行う。その際に、EU法及び英国法に詳しい伊永大輔教授にコメントを受け、研究の方向性を確認する。 2.平成30年度の研究計画としては、日本法におけるハブ・アンド・スポーク型共同行為規制について体系的に分析を加える。その上で、PBにおける協調行動規制の日米欧の比較を踏まえた上で、PB提供業者・運営業者がコンテンツ等供給業者に対して働き掛ける協調行動規制について、新たな規制モデルの構築を検討する。規制モデルについては経済学・経営学的な視点からのコメントを松田温郎准教授、川村一真准教授から受け、研究の方向性を確認する。
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