研究課題/領域番号 |
16K13323
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松原 英世 愛媛大学, 法文学部, 教授 (40372726)
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研究分担者 |
小佐井 良太 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20432841)
河村 有教 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 准教授 (30403215)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 死因究明 / 死因究明等推進法 / 死因・身元調査法 / 法医学 / 解剖 |
研究実績の概要 |
本研究(地方における死因究明制度の実態に関する研究)の主たる目的は、地方(愛媛県)における死因究明制度の運用の実態を明らかにすることである。そのためには、データの取集とそれを可能にする研究協力者との連携の確立が必要となる。そこで、初年度の本年度は、研究代表者と研究分担者でその前提となる文献の収集・レビューを行うとともに、どのようなデータをどのように収集するかについて法医学者である研究協力者を交えての検討を行った。その後に、そこで得た枠組み・手順に従って、データの収集を開始した。 まず、愛媛県警において死因究明に専属的に携わる検視官にコンタクトを取り、全国、並びに、愛媛県における死体取扱件数等のデータを提供してもらうとともに、実務について聞き取り調査を行った。 次に、松山地裁の裁判官の協力を得て、報道関係者とともに死因究明に関する勉強会を開催した。講師として招聘したのは法医学を専門とし、愛媛県において司法解剖等を行っている開業医である。本勉強会を通して、法医学についての基礎知識や実務的な事柄、並びに、愛媛県における実務の実態についての知見を得ることができた。 また、愛媛県警の警察医に対して死因究明にかかわる実務について聞き取り調査を行った。 以上の聞き取り調査に加えて、インターネット等を活用して、関連する資料やデータを収集した。 上に示したデータの収集活動と並行して、研究代表者と研究分担者で定期的に研究会を開き、収集した資料・データについて検討を加えて情報を整理するとともに、研究組織において知識の共有を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書にも記載したとおり、本研究は先行研究の極めて少ない領域であり、手探りの状態で資料・データを収集し、研究を進めたてきたが、幸い、研究協力者による有益な示唆や関係機関・関係者の献身的な協力により、「研究実績の概要」のところで述べたように、ある程度満足できる成果が上がったものと考えている。そうして獲得できた知見によって、足りない部分(すなわち、来年度以降に補うべき資料・データ)が何かを把握することができ、また他方で、集中的に取り組むべき課題を絞り込むことができたことも大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は今年度の延長線上で、以下の3点についてもっぱら愛媛県の状況を検討する。 第1に、死因究明等推進法によって設置されることとなった死因究明等推進協議会である。当会設置後に死因究明に関する環境・実務は変わったか? 変わったとすれば、どのようにかわったか? について検討する。 第2に、その意義が正しく実現されるような方向で死因・身元調査法は運用されているか? である。とりわけ、死体発見時の外表検査(法4条)、薬物・毒物検査及び画像診断等による検査(法5条)、医師による解剖(法6条)、身元を明らかにするための措置(法8条)、本法に係る業務に従事する警察官及び海上保安官の人材育成(法13条)の解釈上及び運用上の問題点について検討する。 第3に、子どもの死因究明をめぐる問題である。近年、導入が提唱されている「子どもの死亡登録・検証(チャイルド・デス・レビュー:CDR)制度」の検討と併せ、子どもの死因究明の現状と課題をデータ分析と関係者への聴き取り調査に基づき検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、大都市圏に設置されている監察医制度(もっぱら東京の)の調査を実施するために、本年度中にその準備に取り掛かるべく東京への出張を予定していたが、諸般の事情によりそれが叶わなかった。 また、データの収集に専念し、その整理・分析に至らなかったため、当初予定していた人件費(資料整理のための謝金)を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
監察医制度の調査のための出張費(東京)として使用する予定である。 次年度は死因究明に関する環境・実務への死因究明等推進協議会設置の影響、並びに、死因・身元調査法の運用状況を検討するための資料を大量に収集する予定であるので、その整理・分析にかかる費用として使用する予定である。 チャイルド・デス・レビュー制度に関わる弁護士等への聞き取り調査にかかる費用として使用する予定である。
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