本年度(最終年度)は、昨年度の前提的な研究(少年保護事件における責任要件の要否の検討)に続いて、犯罪少年に対する責任追及の在り方を中心に検討するとともに、実務における犯罪少年の扱いの実際を把握することを念頭に置いて研究を展開した。具体的には、①少年鑑別所法と新少年院法の制定経過を中心に、一般的な形で、矯正管区の職員からの具体的な立法経緯と背景、さらにその後の運用状況、②少年鑑別所における犯罪少年への対応として、心身鑑別や意図的行動観察による事実上の処遇について、現場担当者(精神科医および矯正専門官など)からの知見の提供、③特に精神的問題を抱えた犯罪少年に対する第3種少年院(旧医療少年院)での処遇について、京都医療少年院および関東医療少年院の現場担当者から、現場での具体的な対応について知見を提供していただいた。当初は、これらの知見を確認するための作業として、両医療少年院を中心に視察を行う予定であったが、全部で6回の研究会を開催して、医療少年院以外の施設の対応の知見を得ることを優先したため、研究会として実際の処遇現場を視察することまでは出来なかった。ただ、研究代表者、連携研究者、研究協力者のそれぞれが、本研究会以外の機会を利用して多くの少年処遇施設の参観を行っており、それらも本研究会としての成果と言うことができよう。 また、京都医療少年院と関東医療少年院の現場担当者から知見を得ることによって、同じく「第3種少年院」として、法務省の同一の通達によって処遇を行っているにも関わらず、必ずしも均一的ないし均質的なものになりえてはいない状況が明らかにされた。その意味で、各施設における犯罪少年処遇が必ずしも全国的に画一でないことが判明し、こうした事実は観護措置機関としての少年鑑別所等においても同様であるかもしれない。この点の解明が、今後に残された重要な課題となっている。
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