研究課題/領域番号 |
16K13326
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
曽野 裕夫 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (60272936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グローバル / 規制 / 私法の応答可能性 / サプライ・チェーン |
研究実績の概要 |
1 公法的な《規制》に対する私法の応答可能性について、次の2つの具体的検討を行った。 (1)「内容規制」に関して「価格条項」の規制に関する国際的な比較法共同研究に参加し、日本における行政的な価格表示規制に対する民法の応答についての法状況を分析し、原稿を脱稿した。これは平成30年7月に開催される「比較法国際アカデミー」(IACL)の会議におけるセッションで取り上げられることとなっている。 (2)「行為規制」に関して、強迫、暴利行為、状況の濫用などの非難されるべき行為についてのアジア諸国の比較法に関する共同研究に参画し、日本法の状況について分析をするとともに、共編者としてワークショップを開催し(シンガポールで実施)、研究のとりまとめの準備を行った。その成果の公刊は平成31年度を予定している。 2 グローバルな《規制》という観点からは、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)による行政的な食品安全基準であるコーデックスの私法へ影響、国連グローバル・コンパクトやフェアトレードなどの自主参加型の規制の私法への影響などについて基礎的な調査(海外調査を含む)を行った。そして、それをふまえて、グローバル・サプライ・チェーンを規律する私法ルールである国連国際物品売買契約条約(CISG)がそれにどう対応しうるかについての検討を行った(同条約については取引当事者が適用排除(オプトアウト)する傾向が強いといわれているが、それの妥当性についても検討を加えた)。その際、日本のサプライ・チェーン(継続的取引関係)に関して、近時注目すべき実態調査を行った国内研究者の協力を得て、その調査の示唆を取り込んでおり、独自性のある検討を加えることができた。この成果は平成30年4月にロンドンで開催される国際ワークショップで報告し、批判を仰ぐことになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度には研究の進展をみることができたが、予定していた研究のうち「腐敗行為防止」に関する論文を脱稿することができなかったほか、「労働」に関するグローバルな規制に対する私法的応答についての研究を行うことができなかった。この遅れの大きな原因は、この研究計画における基礎的な部分についての考察に予想外に時間がかかってしまい、応用的な部分の考察が手薄になってしまったことと、当初、具体的には予定していなかった研究課題(内容規制と行為規制に関する日本法の分析)を新たに組み込んで実施したことにある。 平成30年度においては、約4か月間、海外においてこの研究に専念できる環境を整えることができたので、この遅れは取り戻せるものと考える。 しかし、現時点では、「やや遅れている」と区分せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、平成29年度までの研究成果について、口頭報告や論文公表を通じる学界の批判を仰ぐとともに、次の点に重点をおいて研究を行う。その際、平成30年度後半に海外でこの研究課題に専念できる環境を整えることができたので(平成30年11月~平成31年2月を予定)、その期間を最大限に活用する。 1 グローバルな《規制》に対する私法の応答可能性について「腐敗行為(汚職)防止」と「児童労働」について検討し、その際、特に欧州の民事法条約にも注目をすることとする。 2 グローバルな《規制》に対する私法的応答としての契約の効力否定に関して、グローバル・サプライ・チェーンの場面を想定して、国連グローバル・コンパクト、フェアトレード運動や、OECD等における国際標準に照らした契約規制のあり方、及び、サプライ・チェーンを瓦解させない是正的な救済手段について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、当初予定していなかった研究課題(内容規制と行為規制に関する日本法の分析)を新たに組み込んで行った。また、グローバルな《規制》についての情報が断片化されて相互の関連づけがされていないために全体像の把握作業に時間を要した。これらのことのために、海外調査の前提となる文献調査による全体像の把握が遅れ、海外調査(ドイツ)の一部を、次年度に延期することとなった。そのため、615,091円の残額が生じた。 その残額については、グローバルな《規制》とサプライ・チェーンに関するヨーロッパでの議論を集中的に検討するために実施することを予定している平成30年度後半の海外出張(ドイツ)、および、関係文献の補充的収集に主に使用する予定である。
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