本研究は、不法な行為と和解につき、19世紀フランス法から現代日本までの法発展をたどることを目的としたものである。まず、19世紀フランス民法における不法行為と和解につき、学説および判例の分析を行った。もっとも、その過程において、19世紀フランスの和解論をより包括的に扱う必要を感じたため、その後、研究対象を和解論一般へと拡張した。 そこで、今年度は、19世紀フランスの和解論の全体像を明らかにすること、その我国への継受過程を中心に検討を進めた。その結果、このテーマに取り組んだ梅謙次郎の和解論の解明が重要なテーマとなった。 こうした課題設定の下で、19世紀フランスにおける、和解の定義、和解の性質、和解の方式と証拠、和解の能力と権限、和解の目的物、違約金条項、和解の効力、和解の第三者に対する効力、和解中に包含される事項、和解の無効および取消に関する議論を検討した。また、同時に、梅の和解論の特色についても考察を加えた。 さらに、19世紀フランスの和解論が我国に継受される過程の検証として、ボアソナードの和解論、旧民法編纂過程における和解論、明治民法典編纂過程における和解論を、それぞれ、一次資料にあたりながら調査した。 以上のような作業の結果、和解論の継受過程に対する全体的な見通しが得られた。なお、不法な行為と和解は、和解の目的物の箇所で、全体的な議論と有機的に関連づけながら、個別に扱われている。
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