3年計画の最終年度であり、成果の公表を行うことに力を注いだ。 ①総論的検討としては、「『人の法』の構築--フランス民法学からの示唆」と題する論稿を公表することができた。日本における「人の法」の問題意識の展開を整理した上で、フランスの体系書・教科書における「人の法」体系の変遷をフォローし、日本法における示唆を得ようとするものである。この論文は、法律時報誌の学界回顧においても、2018年度の注目すべき理論動向を示すものとして取り上げられた。また、同書に、「社会構成原理としてのcivilと法の基本思想としてのcivil」を論じる「序論」も寄稿することができた。さらに、末弘・川島・戒能という3人の民法学者の法理論を市民社会論・civilの観点から検討する論稿も公表することができた。 ②各論的検討としては、都市環境問題についての検討に力を注いだ。当初は、景観権を中心に取り上げる予定であったが、都市縮小時代の都市と都市環境という問題に重点をシフトし、所有者不明土地問題を中心とする何本かの論文を公表することができた。また、この領域での作業を集大成する図書『現代土地所有権論』を公表した。この問題は、基本的には「財の法」にかかわるが、「人の法」の観点からも多くの検討すべき問題を含んでいる。他方で、相続法の今後のあり方を論じる論稿も公表することができた。さらに、一般的な人格権の法構造論に取り組み、基本的な問題構造についての見通しを得ることができた。 ③国際的な理論交流としては、日仏ワークショップ「デジタル法」(フランス側責任者:Mustapha Mekki教授ほか)において日本側責任者として参加者のオーガナイズを担当し、議論にも参加した。デジタル法は、AIと法主体性の論点など、「人の法」の観点からも多くの論点を含んでいる。なお、このワークショップの概要を紹介する小論稿も公表した。
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