今年度は、食品の用途に関する特許と機能性食品表示の審査重複問題とパラレルに考えられる(同様の問題を有するはずの)対象として、①商標登録制度と地理的表示制度、および②地理的表示制度と条例に基づく制度(甲州市のワイン条例、およびその他の地方自治体が運用する原産地呼称制度)との関係を掘り下げて検討した。①については、そもそも地名を表示とすることに対して商標登録が認められない方向であるため、実際の衝突は殆どないものの、例外的に使用事実によって需要者が識別できる状態になった場合の商標登録(3条2項)については、重複登録の可能性があり、その実例も確認された。②従前、地方自治体の原産地呼称制度に関して調査研究した先例は無いようであったが、10件程度の制度が確認された。なかには、当該地方公共団体にのみ適用される制度の対象品に付すシールを証明商標として商標登録している事例も存することを確認することができた。特に、証明商標としての登録例は、実質的に地名を含む商標登録の抜け穴となる可能性があり、審査結果の共通化ないし審査資料の共有は不可欠と考えられる。もっとも、商標登録は国の制度、原産地呼称は地方自治体の制度であるため、食品用途の特許と機能性食品表示が双方とも国の制度であることと事情が異なっており、審査結果の共通化や審査資料の共有は、守秘義務の壁もあって簡単ではないと思われるが、商標登録制度または各地方自治体の制度の枠内に規定をおくことによって実現に向けた可能性が開けると考えられた。この部分の提案を後に公表する予定である。
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