研究実績の概要 |
貨幣モデルは、非決定性に関連して2種類に分類できることを明らかにした。具体的には、貨幣保有分布から分布の定常性を表す式へのマップが強連続(ノルム連続)の場合には、バナッハ空間上の陰関数定理の条件が満たされる限りにおいて、非決定性(定常均衡が連続無限)になる。また、この性質は当該位相において開集合になる。また、やや強い条件を満たせば稠密性も成立する。この場合は、ある意味、方程式の数と変数の比較を無限次元に拡張できる場合になると考えられる。一方、このマップが*弱位相における連続性しか満たさない場合は、定常均衡が有限個になり決定性を持つ可能性が発生する。この場合には、そもそも微分も定義できず陰関数定理を適用できない。また、方程式の数と変数の数の関係の無限次元版を考えることが困難になり、多くの興味深い場合が発生するものと考えられる。これらの結果は、貨幣的均衡の非決定性を、数理的に新しい観点から明らかにするものである。つまり、これまで明らかではなかった連続分布における非決定性問題に解決を与えるものであり、重要な成果と考える。なお、結果は、数理的に細部の条件などを詰めたうえで、ディスカッションペーパーにまとめる予定である。 なお、Kamiya and Shimizu (Journal of Economic Theory, 2011)の非決定性を持つモデルは前者の例になり、Kamiya and Shimizu (Journal of Money, Credit, and Banking, 2013)のAll-pay Auctionモデルは後者の例になることも分かった。
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