研究課題/領域番号 |
16K13349
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
神谷 和也 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (50201439)
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研究分担者 |
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80323468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 貨幣サーチモデル / 非決定性 |
研究実績の概要 |
初年度は、貨幣保有分布から貨幣保有分布へのマッピングが強連続な場合は、適切な正則性条件の下で均衡が連続無限個存在することを示した。また、このマッピングが弱連続な場合は、定常均衡が有限個になる可能性があることを示した。平成29年度は、実際にこのマッピングが弱連続で定常均衡が有限になる例について考察した。モデルとしては、最も標準的な財と価格に関するナッシュ交渉を用いた。エージェントは同時に消費と生産が可能であるが、マッチした2人のエージェントの貨幣量が異なっており、貨幣が価値を持つ場合には2人のエージェントの消費量および生産量が異なると同時により貨幣を多く持つエージェントが、貨幣保有が少ないエージェントに貨幣を渡す均衡がある可能性がある。つまり、相対的に貨幣保有が大きいエージェントは相手に渡す財を少なくしその代わりに貨幣を渡す。逆に、相対的に貨幣保有が少ないエージェントは相手に渡す財を多くしその代わりに貨幣を受け取る。この場合、貨幣保有分布は収束し、定常分布は一意になる。さらに、分布のサポートは収縮し、定常均衡では一点になる。なお、この場合には、貨幣保有分布から貨幣保有分布へのマッピングは弱連続になる。 この場合は、定常均衡は効率的になり、金融政策の効果を議論する必要がない。また、分布は退化し、分布のサポートは一点になる。したがって、貨幣保有分布に対する効果を分析する比較静学は意味を持たない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である定常均衡が決定になるモデルは構築できた。しかし、金融政策などを議論するには不十分であり、また貨幣保有分布のサポートが広がりを持っていない。したがって、順調に進展しているが、満足できる結果に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、金融政策などを議論するには不十分なモデルしか発見しておらず、また貨幣保有分布のサポートが広がりを持っていない。また、貨幣保有分布に対する効果を分析する比較静学は意味を持たない。したがって、今後の研究の方向としては、これらの欠点を克服し、社会的厚生に対する政策効果を分析可能にし、また貨幣保有分布(資産分布)を議論できるモデルを構築することになる。また、交渉方法や契約方法が適切な結果を導く可能性があり、この方向での研究も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
都合により、計画していた出張の一部を延期した。これについては、30年度に出張を行って使用する予定。
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