平成30年度は、以下の研究を行った。
1. 貨幣サーチモデルにおいては、貨幣が分割可能かつ貨幣保有分布が離散分布である限りにおいて、追加的な要素を入れない限り、連続無限個の定常均衡があることが知られている。これにより、政策効果も非決定になり、この種のモデルの重要な問題点となっている。一つの解決方法は、サーチ市場以外に集権的市場を追加して、定常均衡を決定化する方法がある。しかし、この方法は明らかに恣意性を含んでいる。我々は、純粋なサーチモデルにおいて、効用関数および費用関数が線形であり、取引における交渉形態がナッシュ交渉である場合には、定常均衡はある程度決定化することを発見した。つまり、社会厚生および貨幣を保有していないエージェントの数は、均衡に関わらず一定になるとを発見しました。一方で、効用の分布(簡単に言えば、貧富の差)については、非決定になり均衡に依存する。したがって、少なくとも社会厚生に関しては、決定的な効果があり、政策について議論できる貨幣モデルになっている。これは、貨幣が分割可能な場合のサーチモデルにおいて、政策が議論できて恣意的な要素の無い初めてのモデルである。
2. 貨幣サーチモデルにおいては、貨幣が分割可能かつ貨幣保有分布が離散ではない場合には、連続無限個の定常均衡がある場合と、有限個の均衡がある場合が知られている。この差は、定常分布を表現する方程式がcompletely continuous であるか否かにより決まることを示した。つまり、この連続性が成立する場合regularityが成り立てば定常均衡は連続無限個あるが、この連続性が成立しない場合には有限個になる可能性があることを示した。
|