本研究は,福島第一原発事故への対応を詳細に分析することによって,非常時対応におけるマニュアルの作成と活用に関して行動経済学的な考察を行っている。 非常時対応マニュアルの対象については「きわめて過酷な事態への対応」と「相応に過酷な事態への対応」を明確に区別し,後者については技術的にも実際的にも十分に対応可能であることから,事前にマニュアルを整備し,事後にその履行を徹底することが重要である。しかし,福島第一原発事故は「相応に深刻な事態」であったにもかかわらず,2つの事態の区別をあいまいにし両者を十把一絡げにして「想定外」としたことから,結果としてきわめて深刻な事態に陥ってしまった。
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