研究課題/領域番号 |
16K13353
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀井 亮 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90324855)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済成長 / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトの2年目となる平成29年度は、(1)産業革命期以前の経済成長を記述するのに適当である、土地を含んだ経済成長モデルの構築と、(2)進化過程における選好の形成プロセスの調査を行った。
(1)のモデル構築の背景として、従来一般的に用いられてきた、資本と労働のみからなる新古典派成長モデルでは、長期における定型的事実を旨く説明できないことを理論的に示した。具体的には、歴史的データにおいて消費財に対して資本財価格の相対価格が低下していること、さらに資本と労働の代替の弾力性が1より小さいことに注目した。既存の新古典派モデルでは、この2つを定常成長経路上で同時に説明できない。そこで、資本・労働に加えて、土地や燃料などの自然資源を加えることでロバストな経済成長理論を構築可能であることを示すことが出来た。その中間成果は、チュラロンコン大学(タイ)、GRIPS、神戸大学、早稲田大学、等において報告を行い、有用なフィードバックを得た。
(2)の進化プロセスの調査については、経済成長理論から離れたSocial EconomicsやEvolutionary Psychologyの分野に有用な関連研究があることが分かり、経済成長理論への応用について検討を行った。Social Economicsでは、時間選好率やリスクに対する態度、さらに、どのような消費に対して効用を感じることが、ある種族にとって最も生存可能性を最大化するかという問題について、基礎理論が与えられている。しかし、経済成長理論へのアプローチはまだ余りされておらず、その方策についていくつかプロトタイプを試した。Evolutionary Psychologyは、経済学ほど明確に数学モデル化されていないが、議論のベースとなる定性的な実験結果が多く有り、利用可能性が高いことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のベースとなる土地を含んだ経済成長理論モデルはほぼ完成しており、国内外での中間報告も行ったことから、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に中間報告を行った土地を含んだ経済成長モデルについて、論文執筆を完成させることが第1の目標となる。さらに、Social EconomicsおよびEvolutionary Psychologyの手法を更に研究し、経済成長理論モデルに取りこんだ新しい理論の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、共用設備の活用などにより、支出額の節約が可能となった。次年度使用額は、海外共同研究者との打ち合わせなど、旅費を中心に活用したい。
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