研究実績の概要 |
研究代表者は、海外共同研究者と共同で、ナイジェリア北部の農村部において、母子の健康を妨げる女性の行動に関して、一連のフィールド実験を行っている。その一つが、心理的障壁(誤解、迷信、不信感等)である。本研究の目的は、妊娠適齢期の女性の破傷風予防接種における、心理的障壁の存在を特定し、その大きさを測定すること、それらの結果をもとに母子保健に関する新しい発展的なフィールド実験について検討することである。2年目の最終年度は、主に次を行った。 1. 第1回女性予防接種実験データの分析と論文作成:本実験は、予防接種の心理的障壁を直接扱った最初のランダム化比較試験(RCT)である。予防接種行動における心理的障壁、予防接種における友人からのピア効果、予防接種促進のための情報介入におけるフレーミング効果について分析を行った。前者2点について論文2本を作成し、国際学術雑誌に掲載予定である。 2. 第2回女性予防接種実験データの分析と論文作成:本実験では、第1回実験における心理的障壁を特定するためのデザイン上の不備を是正した上で、心理的障壁の大きさを測定するためにデザインを発展させた。有益な新しい分析結果が導かれ、論文の作成作業を行った。 3. 母子保健フィールド実験の検討:第2回実験と並行して行った現地予備調査(当該女性ならびに医療スタッフへの聞き取り)、第1, 2回女性予防接種実験結果、それ以前に行った産前検診実験結果、および関連研究のレビューをもとに、新しい母子保健フィールド実験の可能性を一から検討しなおした。その結果、当初予定していた第3回女性予防接種実験よりも、院内出産を対象とした実験のほうが、より大きな学術的・政策的貢献が期待でき、発展性が高いことが明らかとなった。これを受けて、院内出産実験のアプローチを検討した。
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