• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

発展途上国のクリーン燃料普及による室内空気汚染改善の可能性:ミクロ計量分析

研究課題

研究課題/領域番号 16K13364
研究機関早稲田大学

研究代表者

有村 俊秀  早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70327865)

研究分担者 片山 東  早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (00595746)
作道 真理  一般財団法人日本経済研究所, 調査局, 研究員(移行) (70748954)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード発展途上国 / 室内大気汚染 / クリーン・エネルギー / ミクロデータ / 構造推定 / ピア効果 / 情報提供
研究実績の概要

発展途上国では、薪炭材利用による室内大気汚染が深刻な問題となっている。この解決策は、電気やガスなどのクリーンエネルギーの普及である。まず文献研究を実施しこの普及の阻害要因の候補を探し出した。要因としては、所得や教育水準、さらには健康被害の知識不足などが示唆された。また、ピア効果が普及に影響する可能性も示唆された。
次に、対象地域として、インドのコルカタ郊外を選定し、現地調査を実施した。現地調査は、予備調査を経て、本調査を実施した。薪・牛糞・石炭を「汚い燃料」、灯油・液化天然ガス・電力を「クリーン・エネルギー」と定義し、分析した。家計の燃料選択をランダム効用モデルを用いてモデル化し、収集したデータを用いて回帰分析を行った。ロジット・モデルを用いた分析の結果、調理が家の中で行われる家計ほど、また、燃料を無料で入手することができない家計ほど、「クリーン・エネルギー」を選択することがわかった。それに加えて、「家計所得」、「回答者の年齢」,「教育水準の高さ」に関する指標と「クリーン・エネルギー」の選択との間に正の相関が見られ、「家計の構成員数」、「最も近い市場への距離」に関する指標と「クリーン・エネルギー」の選択との間に負の相関が見られた。
さらに、予備調査を経て、本調査を実施し、大きな標本数を獲得することができた。
また、同時にブータンのミクロデータを用いた分析も開始した。世界銀行のWorld Bank Living Standard Measurement Survey(LSMS)をモデルとしたBhutan Living Standard Survey(BLSS)のデータを用いた分析を行った。既に、2004年、2007年、2012年の3カ年のデータの分析を開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、開発経済学の専門家を招いた研究会を開催し、途上国での調査についての留意点を明確にした。その上で調査対象として適切な場所として、インドのコルカタ郊外を選定した。対象地域の特性や先行研究を考え、プレテストの調査票を作成し、実施した。また、調査項目選定にあたっては、先行研究を踏まえて理論モデルを検討した。そして、その上で調査項目を重要な変数に絞った。
プレ調査についてはデータクリーニングや基本的な統計分析を実施し、その結果を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿した。論文は受理、掲載された。
次に本調査を実施した。実施に際しては、プレテストで直面した問題を踏まえて調査票を修正し、その上で行った。本調査で収集したデータのクリーニングを開始し、記述統計や各変数の相関などを調べた。現状では、所得ならびに、室内大気汚染の知識と、ピア効果の影響が主要な要因として示唆された。
BLSSデータ分析では、まずデータクリーニングを行った。次に、情報伝達手段に注目し、クリーン・エネルギー選択への影響分析を開始した。特に、適切な操作変数の検討も行った。

今後の研究の推進方策

昨年度調査で収集したデータを利用して、計量分析を開始する。そのために理論モデル、及び、それに基づいた計量モデルを構築する。計量分析では、まず、室内大気汚染の知識がグリーン・エネルギー選択に影響するかを検証する。次に、クリーン・エネルギー導入のピア効果が、存在するのかどうかを検証する。従来の研究では誘導形で推定されており、効果について過大推定の可能性がある。そこで、クリーン・エネルギー導入のピア効果をナッシュ均衡として理論モデル化し、構造推定を行う。
分析結果は国際学会などで報告し、ディスカッションペーパーとしてまとめ、公表したのち、学会誌に投稿する。
また、実証分析から明らかになったクリーン・エネルギー普及の阻害要因に関してどのように補足できるのかを検討し、先進国並びに他の途上国に関する先行研究と比較する。さらに、上記阻害要因と、価格メカニズムの関係を明確にする理論モデルの構築を考える。
さらに、ブータンに関しては場所を選定して、調査を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

ブータンで行う予定の調査が、調査票の確定、場所の選定などの遅れにより、2017年度に繰り越された。そのため、予算に次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

ブータンでの調査については、ほぼ対象場所を確定した。そのため、2017年度中に調査を行う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Cooking Fuel Choices - Analysis of Socio-economic and Demographic Factors in Rural India-2017

    • 著者名/発表者名
      Mriduchhanda Chattopadhyay, Toshi.H. Arimura, Hajime Katayama, Mari Sakudo and Hide-Fumi Yokoo
    • 雑誌名

      環境科学会誌

      巻: 30(2) ページ: 131-140

    • DOI

      http://doi.org/10.11353/sesj.30.131

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi