平成30年度は、国勢調査データ等小地域統計データベースの作成及び、小地域統計を用いた地域の異質性と地方公共サービス供給に関する論文の執筆、小地域統計を用いた異質性と震災死者数に関する研究の発表を行った。 第1に、小地域統計データと市町村データのマッチングを行った。前年度に小地域統計データベースの修正と確認を行っていたが、修正後の東日本大震災死亡者と津波高のデータおよび、小地域国勢調査データ、市町村庁舎の標高、市町村財政・人口社会データ等のマッチングを行った。 第2に、地域の異質性と地方公共サービス供給に関する研究の成果を加筆・修正し、ディスカッション・ペーパーとして出版した。データの微修正や新しい分析手法の採用など、研究の内容に変更が生じたため、追加の分析などを行うとともに、論文執筆を行った。なお、この研究成果はフィンランドのVATTのワークショップで発表し、現在海外雑誌に投稿中である。 第3に、小地域統計を用いた地域の異質性と東日本大震災における死者数に関する実証分析を行った。分析の結果、町丁字レベルの小地域における年齢階層の異質性が高い、つまり様々な年齢階層の住民がいる地域ほど、死者数が多いことが分かった。他にも、津波浸水高が高く、津波浸水面積が広いほど死者数が多く、一方で自市区町村から通勤・通学している割合や現在の住居に長く住んでいる人の割合が低いほど死者数が多いこともわかった。地域の年齢構成や住民の定着度といった一種のソーシャル・キャピタル、津波避難の困難性などが震災の人的被害と関連している可能性があり、今後分析を深めていく予定である。なお、本研究の成果は、財政学で世界最大のInternational Institute of Public Financeで発表した。
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