研究実績の概要 |
今年度からは埼玉県のある自治体と協力し、全ての認可保育所(35ヶ所)を対象に、国際的に広く用いられる「保育環境評価スケール」(Harms, et al, 2003; 埋橋訳, 2009)を用いて、1・3・5歳児の各クラスの保育環境の「質」を定量的に把握することを試みた。これは、経験を積んだ調査員が、午前中と昼食、午後の午睡の前までの時間帯に保育所を訪問し、幼児の場合は43、乳児の場合は39の項目を観察調査によって評価するもので、各保育施設における特色ではなく、すべての子どもに共通するニーズが満たされているかという点を中心に、子どもの保護の面(保健と安全管理)・社会的および情緒的発達(相互関係・望ましい態度・習慣の育成等)・知的発達(学びの活動)という側面から総合的に保育の質を評価するものである。これに加え、「乳幼児発達スケール」(大村他, 1989)を用い、担任保育士が調査対象の児童(1学年、約700名)の発達状況を評価、対象となる児童の保護者とその担当保育士(1学年、約90名)に対する質問紙調査も実施した。また、自治体の保育所事業を担当する課だけでなく教育委員会とも連携し、本研究で調査対象となった児童を、就学後の「埼玉県学力・学習状況調査」の結果と照合する。「埼玉県学力・学習状況調査」(以下、埼玉県学調)は埼玉県下の全自治体、全公立小・中学校の生徒を対象として実施され、同一生徒の学力や非認知能力(自制心・やりぬく力[GRIT]・勤勉性・自己効力感等)の長期追跡調査である。代表者は、埼玉県学調を用いた政策評価を行う公募研究に唯一採択されている研究者であり、今後埼玉県教育委員会が実施する就学後の追跡調査のデータへのアクセス権を持つ。本研究の対象となった児童の、就学後の学力や非認知能力がどのように変化したかを分析する。
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