研究課題/領域番号 |
16K13374
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐藤 清隆 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30311319)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 為替レート / パススルー / 産業連関表 / 生産連鎖 |
研究実績の概要 |
今年度は生産連鎖の観点から日本の輸入のパススルーに関する実証分析を行うために、日本の産業連関表(2000年表、2005年表、2011年表)のデータ処理と、日本銀行が公表する企業物価指数データの中の輸入物価のデータ処理を行った。データ処理完了後は、「為替レート→輸入物価→国内生産者物価」という価値連鎖に基づくパススルー分析を行った。同推定作業を2000年、2005年、2011年の産業連関表を用いて行い、日本国内の生産連鎖(投入産出構造)の時系列的な変化によってパススルー率がどのように変わってきたのか、そしてどのような要因でパススルー率の変化が生じたのかを実証的に分析した。 分析の結果、為替レートの変動が国内の生産者物価に及ぼす影響は先行研究の結果と比較しても大きいことが確認された。また、近年の原油価格の大幅な変動が日本国内物価に及ぼす影響を厳密に捉えるために、原油輸入価格が50%低下したことによる国内生産者物価への影響をシミュレーションした結果、原油価格変動が日本の機械産業の生産者物価に及ぼす影響はごくわずかであることを明らかにした。 さらに、輸入のパススルー率の時系列的な変化を引き起こした要因を明らかにするためにパネル分析を行った結果、海外からの中間財輸入のウェイトが高く、さらに海外への輸出を行う傾向が強い産業ほど、輸入のパススルー率が高まることを実証的に明らかにした。 同分析結果は2016年8月に開催されたEuropean Economic Associationの国際大会(EEA-ESEM 2016, Geneva, Switzerland)で発表した。学会で得られたコメントに基づいて論文の改訂を重ね、2017年中に開催される複数の学会に論文を投稿し、いずれも発表を認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な研究として位置付けていた論文を作成し、ヨーロッパで高い評価を受けている学会(EEA-ESEM 2016, Geneva, Switzerland)で論文を発表した。その後、論文の改訂を重ね、2017年中に開催される3つの学会に論文を投稿し、いずれも学会発表が決定している。初年度は順調に研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本論文の改訂版は2017年6月開催のAsian Meeting of Econometric Society (Hong Kong) 、同6月の日本経済学会2017年春季大会、2017年8月開催のSingapore Economic Review Conference (Singapore) で報告することが決定している。これら学会報告において討論者から受けた助言に基づき、論文の改訂を進めて、2017年中に査読付きの国際学術雑誌に投稿する予定である。 もう一つの研究として、経済産業省が公表している日米の2国間国際産業連関表を用いて、国際的な価値連鎖に基づく輸出・輸入のパススルー分析を行う。同2国間産業連関表は174部門の詳細なデータを利用することができるという利点もあり、2017年度中にできる限り分析を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に学会での研究成果発表を多く予定しているため、今年度の予算の一部を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年6月開催のAsian Meeting of Econometric Society (Hong Kong)で研究成果を発表することが決定しており、その旅費として支出する計画である。
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