本研究では、証券市場において、オーダーフロー情報より作成した注文不均衡が、証券の将来価格に対して予測力を持つかについて分析した。証券の日中取引のデータであるティックデータより、実際に取引所に出された成行注文、指値注文、およびその他の注文を識別したうえで、本年は特に大口成行注文と小口成行注文を区別し、それぞれについて買い注文と売り注文の差を表す注文不均衡が、どのような銘柄において、またどのような状況において、将来価格に対する予測力が高いかまたは低いか、を分析した。多くの場合、注文不均衡は、将来の価格変化を正しく予想する。すなわち、注文が買いに偏った後に価格が上昇する傾向がある。通常、注文不均衡が買いに偏った後に価格が下落する、という逆の関係を示すことはないが、本年の研究では、近年取引が活発になっている指数連動型ETFの一部において、市場のボラティリティが高いとき、小口注文の不均衡により将来の価格変化の逆を予測できることが明らかになった。理由として、何からのヘッジ需要をもつ投資家は、ボラティリティが上昇してヘッジ需要が高まったとき、単体では損失となることはわかっているが、ヘッジを効率的に行うことのできるETFを用いるため、注文不均衡が将来の価格変化の逆を予測すると考えられる。このような銘柄では、価格インパクトが低下することで、情報トレーダーが活発に取引すると考えられるが、これと整合的な実証結果を得た。すなわち、情報トレーダーは、他の投資家の行動を予想しながら戦略的に銘柄選択を行なっていると考えられる。
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