研究課題/領域番号 |
16K13381
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
藤原 孝男 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (70173490)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 途上国疾病 / バイオベンチャー / デスバレー / リアルオプション / ベイジアンMCMC分析 |
研究実績の概要 |
研究対象としての途上国疾病 (Neglected Diseases)には、マラリア・HIV・結核の主要3大疾病の他に、ブルーリ潰瘍、シャーガス病、コレラ、デング熱、トラコーマを含む熱帯疾病13種、そして肺炎球菌感染症、下痢、毒素原性大腸菌、ロタウイルスなど貧困関連の疾病6種を含む計22種が撲滅の標的になっている。現在、バイオベンチャーが介入している開発プロジェクトとして、治療薬では72件、ワクチンでは87件、診断薬では32件の計191件が知られている。他方、製薬大企業では各範疇が順に54、21、0の計75件となり、むしろベンチャーによる貢献数の多さが目立つが、バイオベンチャーの母集団の数からすると5%程度の企業の参入と推定されている。また、関連のバイオベンチャー134社の国別分布では米国34%、英国7%、インド・ドイツ・スイス各5%、デンマーク4%、中国3%の順で、日本の割合はさらに2%とかなり低い位置を占める。3年の研究期間の対象を医療の優先順位から初年度に治療薬、第2年度にワクチン、そして最終の第3年度に診断薬と予め大別している。 今年度は、第2年度で、第1年度の治療薬に続き、ワクチンにおける当該ベンチャーの活動を公開データを基に解析した。特に、途上国疾病 (Neglected Diseases)に関与するバイオベンチャーでの治療薬とワクチンとの比較において、研究開発費と純益・株主価値・現金投下資産との各投入-産出の関係をベイジアンMCMC分析によって解析した。より具体的には、現時点とリーマンショック時点との2時点における研究開発投資のスタイルの相違を解析し、各グループのデスバレー克服に対する戦略の相違をリスク管理と製品ポートフォリオの観点から解析した。また、モデルについて事例による妥当性検証のためにインドのCentre for Cellular and Molecular Platforms (C-CAMP)とバイオベンチャー数社の実態調査も実施する機会があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベイジアンMCMC分析についてRStanを用いて解析したが、当該ソフトウエアの使用に関して初めてのわりには順調に進んだと思われる。また、国際会議、JSPS-ICSSR2国間セミナー(バンガロールのIndian Institute of Science(IISc)にて開催)、国内学会での各研究発表でもそれぞれ比較的好意的なフィードバックを得られたと自己評価している。インドのIIScとの2国間セミナーでは、相手の研究室の新人の博士課程の院生(学部から飛び級で博士課程に入学)のテーマ・方法論が研究代表者のテーマと類似であることが判明し、同じくIIScの他の研究室のポスドクが2018年4月末に研究代表者の研究室に民間財団の支援で赴任しており(2019年末まで滞在予定)、加えて、第2回目のJSPS-ICSSR2国間セミナーは2018年8月に今度は本学にて開催予定である。こうして、今後、インドのIIScとの共同研究の可能性が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、途上国疾病 (Neglected Diseases)に関与するバイオベンチャーでの今までの治療薬・ワクチンに、診断薬の開発をも加えて、フィードワード的な機能の経済的な評価と他の治療薬・ワクチンとの組み合わせのシナジー効果も評価したい。例えば、ベンチャー生態系でのリスク管理支援政策なども検討可能である。また、インドの研究者とのパイプが拡大すれば、インドの当該疾病や対処方法、加えて関連のバイオベンチャー・同生態系について情報収集し、新たな可能性も研究ポートフォリオに加えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートPC購入の選択に慎重になり過ぎて時間がかかり次年度に繰り越したことと、他のプロジェクトとの時間調整で出張可能な予定がたまたま決まらなかったことによる。
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