本年度は、主に①国際データを用いた企業間信用の実証研究、②議決権行使助言と株主総会投票結果の国際比較の2つのテーマについて、論文執筆および学会報告を行った。 ①については、労働者・投資家保護法制や文化の異なる40か国のデータを用いて、財務保険機能を持つといわれる企業間信用が金融危機時に借り手(顧客)企業の価値に正の影響を与えていること、そのような関係が Civil Law の国、長期志向の国、不確実性回避度の高い国など、長期的関係が重要な国で顕著になることを明らかにした。この研究は、Journal of Banking and Finance に掲載された。 ②については、労働者・投資家保護法制の異なるイギリス、フランス、日本の株主総会のデータを用いて、議決権行使助言会社が反対投票を推奨した議案の賛成率の低下が、特に分散化したポートフォリオを持つ外国機関投資家の持株比率が高くなるほど大きくなることを明らかにした。また、イギリスについて、英語圏以外の外国人機関投資家持株比率が高くなるほど、議決権行使助言の影響力が大きくなることを明らかにした。これらの結果は、分散したポートフォリオを持つ外国人機関投資家は十分なモニタリング能力を持たないことを示唆している。研究成果を Western Economics Association International で報告するとともに、SSRN Working Paper として公刊した。 他に、労働者保護法制や労働者mobility や文化特性とリスクテイキング、リストラクチャリングの関係の実証分析、労働者保護に関する政策不確実性が企業の配当政策・現金保有に与える影響を分析した。
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