研究課題/領域番号 |
16K13391
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷川 信次 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90218446)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リショアリング / 多国籍企業の立地選択 / 多国籍企業の子会社役割 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多国籍企業が海外で展開する事業活動の一部ないしは全体を国内に戻す、本国回帰(リショアリング)の実態を明らかにし、そのプロセスの背後にある論理を理論的・実証的に解明することにある。海外事業のリショアリングに対して、企業の海外進出から拠点シフト(リロケーション)、撤退まで含めた国際化行動や、立地要因の変動、企業戦略、産業・企業特性といった要因を考慮に入れながらシステム論的にアプローチし、リショアリングのプロセスを日本企業を対象に解明することを目指すものである。 H28年度において、まずは多国籍企業の立地選択に関わる先行研究のシステマティックなレビューを行った。Hymer、Dunning、Vernon、Ghemawatらの多国籍企業研究や、HooverやPorterらの経済地理学、PredやSmithらの空間経済学、BenitoやBirkinshawらの撤退・リロケーション分析などの比較調査を通じて、"Liability of foreignness" と立地特殊的優位の相対強度の変動、立地ポートフォリオの選択と管理、国境をまたぐビジネスにおける距離といった、リショアリング行動メカニズムの解明に役立つ概念を生成し、概念間の関係性の検討を行った。またこれら文献調査とあわせて、リショアリングを経験した日本企業および、企業の海外展開や海外からの対内直接投資に対する支援と情報収集調査を行う諸機関の関連部署等において、インタビュー調査を実施した。 在日外資系企業を対象とした子会社役割形成に関する実証分析においては、日本に進出する外国企業の立地選択と日本企業のリショアリング・プロセスとを比較対照させる視点から考察を加え、多国籍企業による立地選択の動態プロセスと子会社役割の進化が相互に密接に関連している可能性を導き、その成果を欧州国際ビジネス学会(EIBA)年次大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行文献および統計書・各種資料調査、ならびにヒヤリング調査を進めるなかで、多国籍企業によるリショアリング行動の背後にある企業の立地選択において、立地ポートフォリオの概念の重要性を認識するに至った。つまり、リショアリングを特定事業の海外進出から撤退・リロケーションという、多国籍企業の本国と特定進出先国の一対の関係の中での立地選択プロセスとして眺めるだけでなく、多数の事業と多数の国からなる立地ポートフォリの選択・組み換えと管理の視点からとらえることの必要性である。こうした観点から、リショアリング現象に対する分析枠組みの再構築を慎重に進めることが肝要となる。そのため、研究計画着手時に当初予定していた、インタビュー調査に基づくケーススタディを通じた帰納的推論による理論モデル化の作業にも遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
多国籍企業による海外事業活動のリショアリングの動向と実態を把握するため、昨年度に引き続き、統計書、データベース、各種資料調査を行い、多国籍企業の本社および海外現地法人への面接調査で補足する。これら調査を通じて、リショアリングの典型的なパターンを抽出する。加えて、多国籍企業の立地選択、撤退、リロケーション、立地ポートフォリオ、海外進出形態の決定、子会社役割の進化などに関する先行文献調査を継続させ、リショアリングと影響関係にある構成概念を抽出・特定化し、ケーススタディを通じた帰納的推論により、構成概念間の因果関係について考察し、分析枠組みを構築する。その際、立地ポートフォリの組み換えと管理の視点から分析枠組みを構築することを目指す。分析枠組みの確定後、データ収集と定量分析に向けた作業に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績報告に記したとおり、研究計画推進過程において分析枠組みの見直しの必要性が発生し、それにともないインタビュー調査に基づくケーススタディおよび統計資料調査に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の研究計画において実施し、遅れを取り戻す予定である。
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