研究課題/領域番号 |
16K13392
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | イノベーション / 製品開発 / 創発 / プロトタイプ / 対話 / 共創 / デザイン試作 / デザイン思考 |
研究実績の概要 |
本研究では、開発初期段階における「デザイン試作」に注目し、以下の2点を明らかにすることが目的となる。「現物化」(プロタイピング)は「現実化」の一環として行われる開発プロセスであり、「可視化」、「試作」の行動として確認される。「デザイン試作」は研究蓄積のある「量産試作」の前段階に存在し、価値創造に影響を与える。しかし「デザイン試作」に関する研究は非常に少ない。平成28年度は、①現物化(プロトタイプによる現物化)、可視化(スケッチなどによるビジュアル化)の価値創造への効果と役割。②デザイン・ドリブン型開発の特徴である、ニーズ創発との関連について文献調査、実態調査を実施した。①については、試作受注企業のプロセス調査を行い、開発初期段階におけるニーズが明確では無い状況下においてプロトタイプを作成し現物化をするプロセスについて調査を実施した。また、海外のスタートアップのプロトタイプ活用の実態について調査した。②については、自動車のアクセル、ブレーキペダルの踏み間違いというあいまいな現象を解決することを、試作を開発し、使用しながら開発するプロセスを開発者への調査を行った。 平成28年度の研究成果は、“Design Prototyping: Reducing the uncertainty in "fuzzy front end" stage of product development”, ISPIM innovation forum 2017(査読有)。『中小企業マーケティングの構図』、 同文館出版、2016年。「「インサイト(創造的瞬間)」の促進と「デザイン思考」の効果」、日本認知科学会予稿集第33回大会など6タイトルの書籍、論文として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、①文献調査、②デザイン試作に関する実態調査、③現物化・可視化の方法と活用タイミングに関する教育プログラム調査を提示している。また①~③の成果をできるだけ早い段階で公開することを通じて多様なフィードバックを得、研究の修正を図ることを計画にあげている。 ①理論研究として、3次元情報技術における製品開発業務プロセスの変化、デザイン・ドリブン型開発(デザイン・シンキング、ビジュアル・シンキングを含む)、情報粘着性関連論文について文献調査を行った。特に情報の粘着性については、OUIカンファレンスで提示された「Needs-Solutions Pairs」(Von Hippel and Von Krogh 2016) および、プロトタイプと製品開発を議論したラピッド・プロトタイピング(Thomke 1998、フロントローディング(Thomke and Fujimoto (2000))、デザイン試作に対して大きな影響を与える3次元情報技術に関する先行研究(竹田 2000,具・藤本 2000,竹田・延岡・青島 2004)についてレビューを行った。②デザイン試作に関する実態を把握するため、デザイン試作を事業として展開している企業をスクリーニングし、2社の企業に対して開発プロセスの実態について調査を行った。③現物化・可視化の方法に関する教育プログラムについては、レゴ社との協力の下、社会科学系学生に対して教育プログラムを試行している研究者に、その活用方法と効果についてインタビューを実施した。また、スタンフォード大学がグローバルプログラムとして提供している教育プログラムに参加し、参与観察を実施した。それらの調査をもとに東大阪の段ボールメーカーと共同によるプロトタイプツールキットの試作を開発。本学におけるデザイン思考ワークショップにおいて試験的に使用し、その効果を測定した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度の成果をもとに、「現物化」、「可視化」に関する教育プログラムについて調査、試作活用先端業界調査は、予算減額に伴い規模を縮小して実施する。教育プロブラム調査は、当初予定していたデンマーク、シリコンバレーからシリコンバレー地区に限定して行う。また、試作を日常業務で行う頻度の高い上位4業界(自動車部品、家電、アミューズメント(玩具、遊具)、医療機器)の先端業界の中から1社を選定し、クローズドの意見交換を実施するための交渉を行っている。企業に対する調査は、機密性が高いため情報公開が難しくなることが懸念される。そのため、シリコンバレー地区の調査と企業の調査の結果を踏まえて、プロトタイプと情報創発の効果に関する質問票調査の可能性も含めて成果の質が保てるように対応する。 また、成果を中間段階で公開し、有益なフィードバックを得ることを目的に、イノベーションに関する国際学会での報告を少なくても1回。国内での学会での報告を少なくても2回を予定している。またこれらの成果を査読付き論文、ワーキングペーパーとしてまとめることを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー予定であった案件(精密機械製品の開発初期プロセス、自動車のアクセル・ブレーキ一体型ペダル開発プロセス)が、先方の都合があわず実現できなかった。そのため、該当旅費とインタビューのテープ起こしの費用を、翌年度に繰り越しとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年5月に上記インタビューを実施予定であり、計画進捗に影響はない。
|