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2017 年度 実施状況報告書

投資家主導の情報入手が投資意思決定に与える影響についての実験研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K13400
研究機関長崎大学

研究代表者

林川 美由樹 (林川万理水)  長崎大学, 経済学部, 准教授 (30452858)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード財務情報開示 / 意思決定 / EDINET / ビジネスストレス / 療法環境デザイン
研究実績の概要

昨年度において明らかにした情報利用者の納得形成のメカニズムを踏まえ、情報利用者の認知にあらたに焦点を当てた。被験者へのヒアリング結果から、意思決定時における身体状況の影響が大きくクローズアップされた。
過去にファンドマネージャーに行ったインタビュー調査においても、意思決定の正確性は多分にその時の身体状況(心と身体の両方を含む)から影響を受けることが語られていた。その過去のインタビュー結果にも立ち返り、新たに、あらゆるビジネス環境における知覚刺激が意思決定と判断能力に与える影響を体系的に実験調査し理論化することが可能ではないかとの着想を得た。
そこで、情報開示(文書)のデザイン、色などから受ける影響を第一段階に実験調査する計画を立て、コロンビア大学のペンマン教授が公開している財務情報デザインを基盤に、あらゆる実験計画を練った。
2016年11月から2017年にかけてハワイ大学のフランククドウ教授(会計)、キースサクダ准教授、ゲイリーツル准教授(臨床心理)等と財務情報のデザイン、色彩が意思決定能力に与える影響についての実験を準備してきた。この計画を練る段階で物理的刺激と意思決定判断能力についての先行研究レビューをかなり蓄積した。しかし、途中、人体ストレス測定を含む実験には実施大学の治験資産が必要となり、ハワイ大学の治験審査の順番待ちを長く強いられ、4回の書き直しと再提出をしている状況にあった。
2017年1月には、治験審査待ちを一度断念し、試料採取しないストレス測定方法を学び、再度新たな実験計画に書き換えた。日本人被験者を募り、2018年7月までに実施できる運びとなった。結果は、心理統計的分析が行われ、2本の論文が既に国際学会発表のアクセプトを受けている状況である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2017年度に実施予定であったハワイ大学での実験は、治験審査の4回の差し戻しと再提出により時間を要したものの、そのやり取りの過程で多くの収穫があり、適切なインフォームドコンセントの理解、行動実験上の注意事項を踏まえ、日本での実験を実現させた。当初予定していた、ビジネス文書の色彩が意思決定と判断に与える影響の他に、電子情報が意思決定と判断に与える影響、ならびに光反射方法のことなるブラウザの情報開示が人体に与える影響まで実験を発展蓄積させることができた。
特に色彩に関する実験計画をポルトガルの大学において研究セミナーで検討する機会を得ることができ、ポルトガル人と日本人の色彩から受けるインパクトの違いをはっきりとデータとして得ることができ、この事実も論文にしている。現地での議論から、このような知覚センサーの民族・文化間の相違を明らかにするような行動実験結果が、今後、多文化ビジネス環境における不具合を改善する鍵になるかもしれないとの評価を受け、共同研究の立ち上げに向けて新たな一歩を踏み出すことができている。
また、このように本年度に進展した新たな展開により、萌芽研究を新開拓領域研究へと順調に発展させていることを申し添える。

今後の研究の推進方策

今後は、現在実施したばかりの色彩、光反射(ビジネス環境における光グレア)、電子情報の実験に加え、音、香りなどの他の知覚刺激の条件を増やして実験を重ねていく予定である。また、ある程度の実験数を重ねた段階で、療法的ビジネス環境デザインを意思決定と判断、およびストレスマネジメントの観点から構想理論を文献にまとめる計画がある。
同時並行で、公認会計士と財務諸表のデザインが知覚認識に与える影響についてディスカッションを積み重ねている最中である。今後は、実験結果を現場の実務家に公表し、実際に感じていることと実験結果にずれがないか、感覚的意見とこちらからの質問票によるインタビューをおこなって実験結果を慎重に解釈判断していく予定である。
また、実験には、被験者のパーソナリティーが考慮されていないことから、すでに販売されているパーソナリティ診断ソフトを用いて実験を精緻化するかどうかも専門家のご意見をいただきながら検討中である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件)

  • [雑誌論文] Therapeutic Effects of Color in Financail Reporting2018

    • 著者名/発表者名
      Marina Hayashikawa and Flankin Kudo
    • 雑誌名

      ANNUAL REVIEW OF ECONOMICS (Faculty of Economics Nagasaki University)

      巻: 34 ページ: in press

    • 国際共著

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公開日: 2019-03-07  

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