研究課題/領域番号 |
16K13409
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野上 元 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (50350187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 総力戦 / 戦争 / 防衛省 / 自衛隊 |
研究実績の概要 |
本年度は、挑戦的萌芽研究の初年度として、研究計画上重要な複数のポイントに着手することが出来た。 まず、研究資料の中核の一つである自衛隊広報誌(『MAMOR』)の収集・整理、防衛省・自衛隊に関する資料の収集・整理(データ化)、防衛省・自衛隊・軍事社会学に関する先行研究の収集・吸収が進んだ。また、防衛大学校・同大学院で社会学を教える河野仁教授に連絡を取り、研究計画についてのアドバイスをいただいたほか、別日には河野教授の取り計らいで、防衛大学校の見学・授業に参加して学生との交流、同大学院生との交流・研究意見交換を行った。自衛隊に関わり合いの深い地域として、防衛省・市ヶ谷駐屯地・市ヶ谷記念館(東京都新宿区市谷本村町)、神奈川県横須賀市および京都府舞鶴市の両軍港を訪問し、地域案内ツアーの見学、博物館・資料館の見学および関連資料の収集を行った。また、所属校の学士課程の演習授業も使い、既存の「自衛隊と社会」研究・自衛隊広報研究の検討を進めた。所属校の講義「戦争と社会」(新設)では、それらの成果を学生にも提供した。茨城県地方協力本部土浦地域事務所を複数回訪問し、地域社会における自衛隊広報、自治体との連繋状況、自衛隊広報・募集事業の実務や理念、自衛隊と大学の関わりについて関連情報の提供をえた。演習参加者によるグループインタビューも行っている。 学術的なアウトプットに関連するものとしては、第89回日本社会学会大会(九州大学)のテーマセッション「戦争研究の現代的課題」のコーディネートを行ったことを始め、様々な学会・研究会で知り合うことのできた社会学・文化人類学・歴史学の戦争・軍事・自衛隊研究者との意見交換を行った。また論文としては、好井裕明・関礼子編『戦争社会学-理論・大衆社会・表象文化』(明石書店)に「大衆社会論の記述と「全体」の戦争――総力戦の歴史的・社会的位格」を寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応募時に研究計画調書に記載した、アメリカの一般大学におけるROTC(Reserve Officers' Training Corps:予備将校訓練課程)に関する研究ノートを公刊することができなかった(所属校紀要に寄稿予定だった)。研究計画に関わる資料および先行研究の収集整理・吸収は、ほぼ計画通り順調に進んでいる。防衛大学校公共政策学科・河野仁教授(社会学)との連絡は計画通り順調に進んだ一方で、所属校に説明会で来ていた自衛隊茨城地方本部および土浦地域事務所の関係者と知り合う機会があった。そのことで、広報や地域社会における活動についての情報を得るための連絡をえることができ、それらが計画当初よりスムーズに進んだことで、今後の調査の準備に予期以上の進捗が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、防衛省・自衛隊関係者、大学・大学院の講義や演習とも連繋させながら、様々な研究資源や短期雇用をフル活用し、資料調査を進め、聞き取り調査の準備を進める。自衛隊研究者のネットワークからも得るものが多い。ROTC(予備将校訓練課程)の研究ノートに関しては、論文とすることが叶わない場合、短いものでも構わないので、公刊する場を見つける。
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次年度使用額が生じた理由 |
パソコンが予想以上に安く調達できたのと、研究資料の一部(自衛隊広報誌『MAMOR』)が品切れになっていたため、物品費を削減することができた。旅費をめぐっては、研究計画の再検討により、プレ調査として位置づけ直し、滞在日数を減らしたことなどにより経費を削減することができた。謝金等のうち、専門知識の提供に関わる謝金は謝絶され、短期雇用は予定より短い時間の雇用になったため支出を削減することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
品切れによる研究資料の一部の不足分については、古書による調達を考える(より高額になることも予想できる)。安く調達できたパソコンに関しては、OSのアップデートに合わせてスペックを上げるための追加パーツ(増設メモリや内臓ハードディスクのSSD化、外部ハードディスク、グラフィックボードなど)の購入を行う。また、旅費の削減分に関しては、次年度は海外出張を予定しているため、資料収集に関わる滞在日数を増やす予定である。資料整理に関わる短期雇用は、本年度以上の量を次年度も予定しているが、作業量を考えた場合、削減することなく、適切な支出となる予定である。
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