研究実績の概要 |
本研究では,廃校の価値を歴史的・地理的なアプローチから再評価し,今後の防災に役立つ情報として抽出・整理した。 ①社会学的調査:和歌山県内の市町村史,学校100年史,郷土誌,議会資料、災害史などに散逸した情報から,明治期の学校創設時に遡り,新旧校地の位置,沿革,災害履歴などの情報を収集,整理し,和歌山県内で設置履歴のある全ての小中学校,廃校(尋常小学校含む)のデータ化を行った。 ② 現地調査:①で整理した情報を元に現地調査を実施した。立地条件,地形,土地利用,建物や道路の状況など,関係者や住民に対し地域情報,歴史情報,災害情報などの聞き取り調査を実施した。本研究開始時に1,685の現地調査を実施済みだったが,約600件の追加調査を実施し,合計2,271件の現地調査を実施。和歌山県内のほぼ全学校の履歴をまとめることができた。 ③ マップレイヤー作成と情報公開:地理情報システム用い,①,②で確認した位置情報をマッピングし,和歌山県内で設置履歴を確認した廃校(尋常小学校含む),小中学校すべてを対象に,地形,沿革,災害履歴を付記した汎用マップレイヤーを作成した。これをGoogle Mapに公開し,情報修正を行いながらデータの高精度化をはかった。 ④災害安全性の評価:地理情報システムを用い,③のマップレイヤーと公的に公開されている1)津波,2)洪水,3)土砂災害のハザードマップとを照合し,和歌山県内の廃校,小中学校の校地の災害安全性と危険性を評価。マップレイヤー上のすべての廃校,小中学校の位置の災害安全性に関連する情報の「見える化」を実現した。その結果,土砂災害に関して旧校地を含む校地の約8割が危険地域を避けているなど,先人の知恵の災害安全性に対する確からしさを確認した。 ⑤研究成果および本研究者らが撮影した多数の写真を取りまとめ『紀北の廃校ー校地の災害安全性を中心にー』として広く公開した。
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