今年度は多くの林業女性へのインタビューを行った。北海道では農林業高校出身者3名と県外からの就業者にインタビューを行った。京都府では同様に林業大学校出身者2名にインタビューを行った。京都の調査では、地元出身で職業高校出身ではない者や、地元以外の出身の女性林業関連就業者6名へのインタビューを行った。同様に、和歌山でも地元出身以外の林業就業者2名と地元出身の林業関連就業者1名にインタビューを行った。一方、秋田や宮崎では、地元出身で、林業高校や農林業高校以外の就業者各2名にインタビューを行った。 これらの女性へのインタビューから就業動機に関する興味深いリクルート過程が見えてきた。年齢の高い女性では、地元地域に残るために林業を選んだ者も多く、その就業状況も多様であった。比較的若い女性では、森林の自然環境への関心から他県から就業している場合も多く、学歴も就業過程も多様であるが、林業労働に就業していた。これらのことから、林業女性の就業過程、キャリアビルディングという研究課題も見えてきた。 一方、来年度の所属学会での報告が決定したことから、そのテーマ「移動」について、調査対象者の家族関係と移動について、これまでの調査対象者全員について調査結果の検討を行った。山村に住む林業女性の移動については、上記の就業動機と関係していて、結婚による移動が一般的だった時代と、就業のために移動する現代女性の違いが明確に見られた。 また、今年度は、農業女性への支援についての依頼原稿を研究雑誌に執筆した。山村に住む人々の生業は林業と農業の両方からなり、夫が林業を中心に、妻が農業を中心にしていることも多く、林業女性が見えない理由も、農業女性として把握される。執筆した原稿は、これらの林業女性も視野に入れた研究の成果である。
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