すでに開発した多変数順位相関係数のソフトウエアを用いて、具体的なデータを用いて分析を行った。今回開発した多変数順位相関係数は、2変数間の順位相関係数を自然な形で拡張した指標である。従って、変数間には従属変数、独立変数という区別はなく、変数はすべて対称的に扱われる。この意味で、一連の変数の間に明確な因果関係が定義されておらず、全体をまとめて扱いたいような場合に適している。従来の指標では、順位相関係数としては2変数しか扱えず、多変数を扱うためには、これらを連続変量と見なし、かつ、従属変数と独立変数とに区別した上で、回帰分析を行う必要があった。今回の指標はこのような制約がないので、明らかに利点があるが、計算結果を従来の手法の結果と比べた場合に、事前に期待していたほどの顕著な対比は見られなかった。この意味で、今後とも引き続き、具体的なデータを用いて、実証研究を続ける必要がある。 また、研究計画ではあくまで記述統計のレベルでの議論に焦点をあてていたが、今後の論理面での発展のために、推測統計への応用についても考察した。しかしながら、基本となる確率分布を適切に定めることができなかったので、この応用に関しては今回の研究期間では、確固たる結論を導くことは出来なかった。今後も引き続き検討を続ける必要がある。なお、推測統計の応用について検討している過程で、統計的仮説検定の手法の一つである比率の差の検定に関して、検定方法自体に問題があることが判明した。この点については、論文において指摘し、学会報告も行った。 今後の研究の展開のためには、適切なデータを選択することが必要である。特に従属変数を明確に定めることが難しく、かつ、連続変数として扱うのが難しいような離散変数のデータを用いることが望ましい。また、推測統計についても、確率分布を確定する必要がある。
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