研究課題/領域番号 |
16K13418
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
丹野 清人 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90347253)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 在留特別許可 / 退去強制令の発付 / etic / emic |
研究実績の概要 |
在留特別許可は近時出にくくなってきている。従来家族がいて日本での定着性が認められると家族全員が日本とは繋がりのない外国籍者であっても、当該家族全員に在留特別許可が出ていた(いわゆる一家全員在特)。しかし、このようなことは2000年代に入ってほとんど見られなくなってきている。それどころか、粗大ゴミを指定された日以外に出した神奈川県条例違反で退去強制令が発布された者すら出てくる有様だあ。 こうした中で覚醒剤取締法違反事件で執行猶予付き判決を受けたのちに退去強制令が執行されたにもかかわらず在留特別許可を受けた者が、最初の在留特別許可から7年後に盗品売買の売り子役として逮捕され有罪判決を受け、この有罪判決のために二度目の退去強制令を2015年に執行された。しかし、裁判の結果、この者は2016年に二度目の在留特別許可を受けることができた。近時の在留特別許可の発付状況を鑑みると、二度目の在留特別許可の発付というのは極めて異例である。しかし、この異例なケースの中には、国(法務省入管局)がこの者の日本滞在は保護すべき点があると判断した要素が色濃く出ているからこそ、このような結果につながっている。この点を裁判資料をこと細かく検討することによって明らかにすることができた。 また、トランスジェンダーでM to Fの外国人に出されている退去強制令の執行停止事件についても、弁護団の中に入りつつ、弁護団弁護士の許可する範囲で資料を見せてもらい、トランスジェンダー外国人が在留特別許可を求める場合の問題点も研究させてもらった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度具体的な研究として進めた、覚醒剤取締法違反事件で退去強制令を執行されたのちに一度目の在留特別許可を得て、その後に盗品売買の売り子役で逮捕有罪判決を受けて退去強制令を執行されたのちに二度目の在留特別許可を受けた事例について「外国人非行少年の社会学」のタイトルでまとめた。トランスジェンダー外国人の退去強制令をめぐる事件については「LGBT外国人と退去強制令の社会学」及び「LGBT外国人と退去強制後の危惧の社会学」のタイトルですでにまとめてある。これら三つの論文を含む「「外国人の人権」の社会学」について2017年度の研究成果公開促進費の採択を受けており、2018年の2月15日までに出版予定である。これらを考えると本研究は当初計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、「外国人非行少年の社会学」のケース、「LGBT外国人と退去強制の社会学」のケースについてさらに詳細にわたる研究を進める。第二に、退去強制されてブラジルまたはペルーに帰国した者へ連絡を取り、連絡がついてインタビューを受け入れてくれる場合には、現地に飛び、帰国後の状況についての聞き取り調査を行ってくる。第三に、司法統計に現れる外国人についての様々な部分について研究を進める。 上記の研究課題を三つの主要なテーマとしつつ、NGO団体や外国人弁護を行っている弁護士の集まり「外国人ローヤリングクラブ」、「自由人権協会」等への聞き取り調査も進めて、国の進める外国人政策を批判的に研究する。 また、研究を進めることと合わせて、1年目の研究成果を積極的に発表していく。現時点で、2017年5月26日に霞が関の日本弁護士会館で外国人よーヤリングネットワークと日弁連が共催で開催するシンポジウムでのキーノートスピーチ、2017年9月23日に開催される日本南アジア学会での招待講演を引き受けているが、これらに加えて他の機会も積極的に活用し、研究成果の発信を着実に進める。
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