研究課題/領域番号 |
16K13422
|
研究機関 | 群馬医療福祉大学 |
研究代表者 |
川端 奈津子 群馬医療福祉大学, 社会福祉学部, 助教 (70770105)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム症(ASD) / 一般就労 / 就労継続 / 環境との相互作用 / 自己調整 |
研究実績の概要 |
平成30(2018)年度は、【調査1:ASD当事者インタビュー】から得られたデータについて、同一職場で働き続けている当事者が、就職後の困難にいかに対処しながら働き続けているかという視点で分析を進めた。その結果、<主体的な問題解決><会社の個性との向き合い><仕事への価値観><仕事への満足と期待>の4つの概念的カテゴリーと12の焦点的コードが生成され、それらの関連性を検討した。さらに、論文化したものを自閉症スペクトラム学会の『自閉症スペクトラム研究』に投稿、第17巻に「就職した自閉スペクトラム症者が困難に対処しながら働き続ける過程」というタイトル名で掲載予定(印刷中)である。一方、この調査結果の分析を進めるなかで、就職した当事者が日々生じる困難に対処するプロセスにおいて10人中2事例に「過剰適応」の疑われる状態が認められた。この2事例について、安定的な就労のための支援および雇用管理への示唆を考察することを目的に事例検討を行い、論文として産業精神保健学会の『産業精神保健』に投稿、査読中である。 また、並行して進めた【調査2:ASD当事者とともに働く社員・上司への質問紙調査】は、当事者を採用している一般企業の割り出しが予想以上に難航していたが、年度内に約130件の有効回答が得られたため分析を実施した。その結果の公表については令和元年(2019)年度に持ち越すこととなったため、補助事業期間の延長を申請し承認されたものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
【調査2:ASD当事者とともに働く社員・上司への質問紙調査】の分析と結果の公表が遅れている。平成30年(2018)年度の学内業務の多忙が常態化しており当初予定していたエフォートを担保できなかったことが影響していると考える。令和元年度は研究の優先順位を上げ、周囲の協力も得ながら業務量を調整し研究成果をかたちにしていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
【調査2:ASD当事者とともに働く社員・上司への質問紙調査】の質問紙において、個別のインタビュー調査に協力が可能と回答した企業の採用担当者を対象とした【調査3:ASD当事者とともに働くための従業員のコンピテンシー】について調査を開始する。最終的には、【調査1】~【調査3】までの結果を統合し、ASD者の継続就労のための環境モデルの草案作成を目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由は主に2点。まず1点は諸事情により当初「予定していたエフォートが確保できなかったため研究計画の遅延が生じた。2点目は、研究課題の特性上、当事者および当事者の周囲の人を対象とした調査が中心となるため、対象の確保に予想以上の労力と時間を要したことである。 最終年度となる令和元年は、【調査2】の結果の公表と【調査3】のインタビューの実施(対象企業は確保済み)に着手し、最終的には【調査1】~【調査3】までの結果を統合したASD者の継続就労のための環境モデルの草案作成を目標とする。
|