研究課題/領域番号 |
16K13423
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
吉原 直樹 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (40240345)
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研究分担者 |
松本 行真 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60455110)
今野 裕昭 専修大学, 人間科学部, 教授 (80133916)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポスト3・11 / 原発事故被災者 / 「難民」化 / 被災者コミュニティ / 帰還政策 |
研究実績の概要 |
現時点で明らかになったことは、概ね以下の点である。 1.相双地区の多くの自治体が帰還政策をすすめるなかで、帰還困難区域を抱える自治体とそうでない自治体との間で、さらに帰還する者としない者の間で分裂/断絶が深まっている。 2.上記の分裂/断絶は主に年齢、世代、家族構成、学歴、子どもの教育、そして稼得状況をめぐってみられる。 3.政府主導の復興政策が総じて経済復興(=「大文字の復興」)に重点が置かれ、被災者の生活の復旧・復興(=「小文字の復興」)が後回しにされる傾向にある。また被災自治体じたい、復興資金の獲得に追われており、長期的な展望の下で復興施策を打ち出すにはいたっていないようにみえる。 4.被災者の「難民」化は、地域によってバリエーションがあるものの、総じてすすんでいる。そして帰還困難区域の被災者たちは、「棄民」化されつつある。 とはいえ、帰還政策についてはなお不確定要素が多々あり(たとえば、中間貯蔵施設の立地をめぐって)、明確な展望を描き切れていないというのが実情である。したがって、以上の4点に関連して課題と論点をより明晰にするために、あらたな調査と補充調査をおこなう必要がある。とりわけ内閣府等の政府関連部局や福島県、さらに福島民報社等の地元メディアにたいして資料サーヴェイおよびヒヤリングを実施し、上記の点について検証することが避けられなくなっている。またこれらの点について、シンポジウムやセミナーを開催して広く社会に発信するとともに、意見を聴取するなどしてfindingsの精緻化をはかる必要がある。しかしそれにしても、上記の4点については、基本的に妥当するものと想到される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、交付申請書に記したように、大熊町を中心に相双地区市町村、福島県立図書館、福島民報社等に対して資料収集およびヒヤリングを実施した。また研究分担者との打ち合わせ会議等を専らメール審議という形で数回実施した。さらに、それらで得た知見を集約中であり、その成果の一部はすでに公表している(「13.研究発表」を参照のこと)。ただし、全体としてみれば、当初計画の8割程度にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の調査で得た成果を早期に集約し、29年度の調査研究のスケヂューリングと最終制約に向けての課題の抽出に努める(現在、進行中)。なお、29年度は、被災者個々に対するヒヤリングを中心におこない、「難民」化の実相を個々のレベルから追い上げるとともに、生活復興の可能性と課題をさぐる。またヒヤリングで得られた知見を社会に向けて積極的に開示していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
インフォーマント(被災者)とのスケヂューリングが双方の都合で当初通りすすまなかったことによって、当初予定していたヒヤリングに要する費用が使いきれなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
スケヂューリングの再調整をおこない、ヒヤリングの実施のための費用に充てたい。
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