日本の農・漁業社会は、従事者の所得の減少、離職者の増加、高齢化、後継者の不足などによって活力の低下が続いている。本研究は、農・漁業に従事する各世帯が長期に渡り、家業・生業の存続を図るために行ってきた選択、いわゆる「生業戦略」に着目し、兵庫県南あわじ市の農・漁業世帯を対象に、経済・経営等の態様に関する定量的データを時系列的に収集・分析することによって、「生業戦略」の理論的、方法論的枠組みを確立することを目的としている。 最終年度となる今年度は、1農業集落(北阿万地区)および1漁協(南淡)を対象に質問票調査を実施し、分析対象は合計3農業集落(N=154)および3漁協(N=119)となった。 これまでの集計結果の一部から示唆されることは、現在の世帯主の平均年齢は、農業および漁業それぞれ66.1±11.6歳、60.3±14.3歳と高齢化が進んでいること、後継者がありの割合は、それぞれ37.0%、20.2%と農業に比し漁業において後継者不足が深刻化していること、後継者がある農業世帯は、稲作の継続、農業用機械の投資などを戦略的に行っていることである。 本研究の特徴となる時系列的定量データは、20年前、10年前、現在、そして10年後の作付品目/面積(漁業種類/漁獲量)、事業の拡大/縮小および後継者の確保などであり、「生業戦略」の方法論的枠組みを確立するために必要な質問票はすでに完成させている。今後は収集したデータをもとに詳細な分析を行う。
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